DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第3回 ハンファイーグルス

2007年成績 : 67勝57敗2分 公式戦3位 プレーオフ進出

 2006年は高卒新人ながら最多勝、新人王、MVPなどタイトルを総なめにした左腕リュ・ヒョンジンの活躍で公式戦3位、韓国シリーズ準優勝と健闘したハンファは、名将キム・インシク2年目のジンクスにはまる可能性があったリュ・ヒョンジンや、高齢化が進み層が薄い投手陣をどう再編成するか、開幕前に注目された。そのため先発要員の新外国人左腕セドリック(元東北楽天)を獲得し、もう一人の外国人は2006年まで在籍したデービスの穴を埋めることを期待された外野手クルーズとなり、投打がかみ合えば8年ぶりの韓国シリーズ優勝も夢ではない戦力が整った。

 示範競技は勝率5割とまずまずの成績で終えると、4月6日からのSKとの開幕3連戦は1勝1敗1分けだった。開幕直後の12日首位に立つが、すぐにSKにその座を譲ってしまった。その後5連敗するなど出遅れ、エースのリュ・ヒョンジンは2年目のジンクスを感じさせない好投で3勝したが、4月は8勝10敗と負け越し7位に低迷してしまった。
 5月になると主砲キム・テギュン、新外国人クルーズの爆発などで6連勝し2位に進出、首位SKを脅かすようになった。首位から最下位まで6,7ゲーム前後の大混戦が続く中、5月も終わりに近づくと徐々に調子を上げ、ついに31日にお得意様のロッテに3連勝し首位に立った。5月は16勝8敗と最高の1ヶ月となった。ところが、6月になって前年の覇者サムソンに3連敗してしまい、3日にはSKに首位を簡単に譲り渡した。
 6月はしばらく大混戦の首位争いが続いたが、ハンファはそこから抜け出せず2位に立つのがやっとだった。すっかりエースに成長したリュ・ヒョンジン、今季復活したベテランのチョン・ミンチョル(元読売)、新外国人セドリックは安定した投球を続けていたが、2006年16勝したベテラン右腕ムン・ドンファンの戦線離脱が痛く、他の投手であまり勝てなかった。首位SKが独走態勢を固めていく中で、ハンファは一進一退の戦いを続け、6月は10勝12敗と負け越し首位と5.5ゲーム差の3位で終えた。

 7月4日には2位に浮上したが、首位SKを捕らえきれず13日にはトゥサンにその座を奪い返された。結局オールスター戦前の前半戦は首位SKと4.5ゲーム差の3位で終えた。26日には2位に浮上したが31日トゥサンにその座を奪われ4位まで一気に転落した。オールスター戦後首位SKの独走態勢が固まりつつある中、トゥサン、サムソン、LGとの2位争いが激化していた。7月は9勝10敗と2ヶ月連続で負け越した。
 主砲のキム・テギュンが不振となり、チーム1の打点をあげていたクルーズが怪我で調子を落とすなど得点力が低下する中、リュ・ヒョンジンなどの先発陣の奮闘、故障で開幕に間に合わず出遅れた守護神ク・デソン(元オリックス)の復調などで、ハンファは8月以降何とか上位に踏みとどまった。8月は11勝9敗と何とか勝ち越したが、首位SKと9ゲーム差の4位となり、最大の目標は2.5ゲーム差で追いかけていた2位トゥサン追撃となった。
 9月になり試合の雨天中止が続き、すぐ後をつけられていたLGが4位争いから徐々に脱落したものの、ハンファはすぐ上の3位サムソンをなかなか捕らえられなかったが、25日から27日の直接対決で3連勝し一気に抜き去った。その後サムソンが連敗を重ね、ハンファは2位のトゥサンに迫ろうとしたが、10月4日の最後の直接対決を前にした3日にトゥサンの2位が決定してしまい、ハンファは3位で公式戦を終えることとなった。9月以降は13勝8敗と勝ち越し、3位確保につなげた。なお、10月7日に予定されていた公式戦最終戦のキア戦が雨天中止となり、9日からハンファは準プレーオフに出場することとなっていたため、完全な消化試合だったこの試合はプレーオフ敗退後の19日に行われた。

 公式戦での戦いを振り返ってみると、リュ・ヒョンジン(17勝)、チョン・ミンチョル(12勝)、セドリック(11勝)の3人で40勝と、勝利数の半分以上を上げていたが、そのあとがなかなか続かなかった。長年先発で活躍してきた現役最年長41歳の大ベテラン、ソン・ジヌは故障で出遅れ中継ぎでの2勝にとどまった。中継ぎに先発に活躍した若手のヤン・フンが7勝と健闘した。守護神ク・デソンも、以前ほどの球威はなくなっていて打たれる場面も目立ったが、26セーブと結果を残した。選手層は厚くなかったが、防御率は3.54と8球団中3位でそれなりの結果は残した。
 「ダイナマイト打線」と称された打撃陣は、思ったほど強力ではなかった。クルーズ(22本)、キム・テギュンイ・ボムホ(以上21本)と20本塁打以上の選手が3名と8球団最多であり、チーム本塁打数(102本)も8球団中2位だったが、打率が8球団中7位の.254と低く、盗塁数は48と8球団中最少で得点数(534)は3位だった。主軸に破壊力はあっても、コ・ドンジン、ハン・サンフン、チョ・ウォヌ、キム・ミンジェなど1,2番タイプの出塁率が低く、足を使った攻撃もなく打線のつながりが弱かった。また、2006年は19本塁打を記録したイ・ドヒョンが今季は不振でわずか6本塁打に終わるなど、一発のある打者が6番以降にいなかったことも痛かった。
 守備面はショートの名手キム・ミンジェ、セカンドのレギュラーに定着したハン・サンフンによる二遊間は比較的安定していたが、サードのイ・ボムホにエラーが多かった。外野の守備にやや不安があったが、本拠地・大田(テジョン)の球場が狭いためあまり深刻な問題にはならず、チーム失策数は76と8球団中2番目に失策数が少なかった。正捕手の座をつかんだシン・ギョンヒョンは盗塁阻止率が高かったが、肝心なプレーオフでトゥサンの快足の選手たちに走られ放題だったのが残念だった。
 各チームごととの戦いを見ると、首位SKに5勝11敗2分け、2位トゥサンに7勝11敗と大きく負け越してしまったのが痛かった。3位争いの相手だったサムソンには10勝8敗と勝ち越し、特に終盤直接対決で5連勝したのが大きかった。6位現代には11勝7敗、5位LG、7位ロッテ、最下位キアには12勝6敗と下位チーム相手にはしっかり勝ち越していた。

 10月9日からの準プレーオフではサムソンと対戦し、本拠地大田での第1戦は先発リュ・ヒョンジンが好投し、キム・テギュンイ・ボムホの2人の主軸がサムソンの先発ブラウン(元阪神)から本塁打を打ち、5−0で完封勝ちした。舞台を敵地大邱(テグ)に移して行われた第2戦は、ハンファの先発チョン・ミンチョルが先制され痛みを訴え3回で降板すると、その後も追加点を奪われ5−0で完封負けした。勝てばプレーオフに進出できる第3戦は舞台を再び大田に移して行われ、ハンファは1回裏サムソンの先発マゾーニから2点を先制すると、先発セドリックは3回に1点を返されたところで降板してしまった。その後ソン・ジヌ、リュ・ヒョンジン、ク・デソンの必死の継投と、イ・ボムホの2本塁打で追いすがるサムソンを突き放し、5−3で勝利し3年連続でプレーオフに進出した。
 10月14日からのプレーオフではトゥサンと対戦し、敵地蚕室(チャムシル)での第1戦はエースのリュ・ヒョンジンが準プレーオフ第3戦でロングリリーフとして登板したため投げられず、ベテランのチェ・ヨンピルを先発として起用した。ところがチェ・ヨンピルは2回持たずノックアウトされ、その後2番手の若手ユ・ウォンサンが好投し追加点を許さなかったが、トゥサンの先発リオスに打線が抑えられ、終盤にマウンドが崩壊し8−0で完封負けした。第2戦は先発チョン・ミンチョルが準プレーオフの時と同様に状態が悪く、3回2失点で降板しハンファはリードを許した。トゥサンの先発ランデルも調子が悪かったがなかなかそれを捕らえきれず、試合はシーソーゲームとなったが、9−5でハンファは敗れ敵地で連敗と最悪のスタートとなった。 
 舞台を本拠地大田に移した第3戦は、最後の望みをエースの先発リュ・ヒョンジンに託した。だが1回にエラーなどもあり3点を先制されると、リュ・ヒョンジンは2回で降板した。2番手セドリックの好投で追加点を許さなかったが、トゥサンの先発キム・ミョンジェに打線が抑えられ、終盤追加点を奪われ5−0で敗れ、3連敗でプレーオフを終え2年連続韓国シリーズ出場はならなかった。なお、ハンファは2005年プレーオフでもトゥサンに3連敗していて、2年前の悪夢が再現されてしまった。

 2005年から名将キム・インシク監督が指揮をとっているハンファは、毎年上位に顔を出し3年連続プレーオフ進出と、1999年の韓国シリーズ優勝以降目立った成績を残せなかったころまでと比べ、それなりの結果は残している。来季はキム・インシク体制4年目であり、その集大成として悲願の韓国シリーズ優勝が求められる。ポストシーズンではまったく打てず、足の故障もあり来季の活躍が期待できないとして、クルーズは今季限りで退団となり、トゥサンから層の薄い外野の補強としてユン・ジェグクを金銭トレードで獲得している。
 公式戦終盤やポストシーズンで好投したユ・ウォンサンなどの期待の若手が成長しベテラン勢の穴を埋め、キム・テギュンイ・ボムホなどの中軸打者などが例年以上の成績を残せば、来季こそ9年ぶりの韓国シリーズ優勝が見えてこよう。トゥサンを2度の韓国シリーズ優勝に導き、61歳になったキム・インシク監督の熟練した采配と選手起用にも期待したい。
(文責:ふるりん