DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第8回 ハンファイーグルス

「暗黒期もついに10年目」 
2017年成績 : 61勝81敗2分(レギュラーシーズン8位)
チーム総合採点…40点


1. 【ポストシーズンは遠い夢のかなたに】
 シーズン途中の5月でキム・ソングン監督が辞任し、下位から脱出できず10年連続でポストシーズン進出に失敗したハンファイーグルス。その戦いを振り返る。


 2017年はキム・ソングン監督にとって3年契約の最終年であった。勝負の年ということもあり、ビヤヌエバ、オガンドと年俸100万ドル以上のMLB(メジャーリーグベースボール)で十分な実績のある大物外国人投手をそろえ、投打に経験豊富な選手も多く、10年ぶりのポストシーズン進出を目指した。

 3月31日の開幕戦は新外国人投手ビヤヌエバが先発したが、トゥサンに完封負けを喫した。4月1日のハンファ戦では延長10回に2点を勝ち越し、レギュラーシーズン初勝利を記録した。4月4日のNC戦では、2016年未勝利に終わった36歳のペ・ヨンスが初勝利をあげ、34歳のユン・ギュジンもリリーフで好投した。だが4月16日のSK戦まで4連敗など、思うように勝ち星を増やせなかった。そのため4月17日、控え内野手のシン・ソンヒョン(元広島)を交換要員に、トレードで控え捕手のチェ・ジェフンを補強した。だが正捕手はシーズン終了まで見つけられなかった。4月23日のKT戦では23歳の若手ハ・ジュソク、外国人の主砲ロサリオの本塁打、先発オガンドの好投で14-1と大勝したが、勢いに乗ることはできなかった。
 5月5日、6日のKT戦に連勝し8位に浮上、勝率5割に近づいた。5月13日のLG戦では主砲ロサリオ、4番キム・テギュン(元千葉ロッテ)の本塁打、24歳の若手の先発キム・ジェヨンの好投で10-0と勝利し、3連勝で7位に浮上した。だが5月21日のサムソン戦で4連敗となり、9位にまで後退した。この試合では3回裏にサムソンの先発ユン・ソンファンがキム・テギュン、ロサリオに連続四球を与えたことで両チームベンチ総出の乱闘劇が始まり、ユン・ソンファンのみならずハンファの先発ビヤヌエバも含む計4名が退場となった。
 実はこの5月21日の試合後、キム・ソングン監督が辞意を伝えていたことが明らかになった。試合前にも高校などのグラウンドを借りて練習したり、試合後に球場に居残り練習したりするなど、監督の方針がチームのフロントと軋轢を招いていたという見方もある。結局5連敗となった5月23日のキア戦後、正式にキム・ソングン監督の辞任が決まり、一軍投手コーチだったイ・サングン監督代行が指揮することになった。結局5月26日のNC戦まで8連敗となり、勝率を大きく落としてしまった。
 5月27日のNC戦でようやくイ・サングン監督代行体制で初勝利を記録し、5月31日のトゥサン戦まで4連勝で8位浮上と息を吹き返したかに見えた。またこのころ、2016年から続くキム・テギュンの連続試合出塁記録が話題となっていたが、6月4日のSK戦で出塁できず記録は86試合までとなった。6月9日のサムソン戦まで5連敗とまた9位に後退した。6月16日のKT戦でロサリオの4打席連続本塁打を記録し、18日までの3試合で8本塁打と固め打ちを見せ、チームも8位に再浮上し6月20日のネクセン戦まで4連勝となった。
 レギュラーシーズンの半分に当たる72試合を消化した6月末、勝率は4割台半ばで8位だったが、7月以降の猛反撃では5位以上でポストシーズン進出となる可能性は残っていた。だが7月になると戦線を離脱したオガンド、故障がちで先発として頼りにならなかったビヤヌエバと2人の外国人投手が額面通りに働かず、頼れるエースがいないチームの弱点が明らかになり、特に7月18日のNC戦から7月26日のロッテ戦まで7連敗と絶不調に陥り、サムソンに抜かれ再び9位に後退し勝率も3割台まで落ち込んだ。
 8月2日のNC戦、2016年は未勝利だった先発アン・ヨンミョンが好投し勝利すると、サムソンと同率8位に並んだ。8月半ばから4番キム・テギュンは故障で戦線を離脱したが、チェ・ジンヘンなど代役の選手が活躍しチームは上向きになった。レギュラーシーズンは残り少なくなったが、8位ながら徐々に4割半ばまで勝率を上げ、まだかすかに可能性が残っていたポストシーズン進出への望みは捨てていなかった。
 しかし先発投手陣が弱く、ロサリオ以外は他チームの圧倒的な脅威となる選手がいない打線では、終盤の爆発は望みようもなかった。そのためシーズン途中で育成選手から正式契約に切り替えた若手の起用も目立つようになった。8位で勝率4割台前半が続き、ポストシーズン進出が絶望的となった9月24日、先発キム・ジェヨン、シム・スチャンなどの好投で首位キアに完封勝ちするなど、ささやかな抵抗は見せた。
 その後10月1日までの5連敗で8位が確定し、10月3日、本拠地・大田でのレギュラーシーズン最終戦、相手は勝利すればロッテを逆転して3位でポストシーズン出場となる可能性があったNCだった。1回表に5点を先制されてもイ・ソンヨル、キム・ウォンソクの本塁打などで追いつき、延長12回までもつれ込んだが8-8の同点で引き分け、2017年のハンファの戦いは終わった。
 

 2017年は5月下旬のキム・ソングン監督の辞任による混乱があり、浮上のきっかけをつかめず上位争いはおろかポストシーズン進出をかけた5位争いにも加われず、2008年から10年連続でポストシーズン進出失敗のプロ野球タイ記録に並ぶなど、暗黒期はさらに伸びてしまった。



2. 【チーム分析】
 2017年のハンファは投打ともに層が薄く、ロサリオを除いては他チームの脅威になる選手も少なく、上位進出はならなかった。


 チーム防御率5.28は10チーム中8位で、先発の防御率5.40は8位だったが、リリーフの防御率5.15は5位と決して悪くはなかった。クォリティースタート(先発が6回を投げ自責点3以下)は54と10チーム中7位で、頼れる先発投手が少なく規定投球回数(144)に達した選手はいなかった。チーム最多勝は外国人投手オガンドの10勝だが、2か月ほど戦線を離脱し貢献度は高いとは言えなかった。もう一人の外国人投手ビヤヌエバも5勝のみだった。チーム最多の128回を投げたペ・ヨンスは7勝と復活を印象付け、先発でもリリーフでも起用された33歳のユン・ギュジンが自己最多の8勝と活躍した。他にも何人かの若手が先発として起用されたが、結果を残したのはキム・ジェヨンの5勝くらいだった。
 キム・ソングン監督が好んでいた細かな継投策のため、リリーフは他チームに見劣りしていなかった。チーム最多の63試合に登板したソン・チャンシクは5勝、チーム最多の15ホールドを記録した。抑えは経験豊富な左腕チョン・ウラムが6勝26セーブを記録した。その他右のシム・スチャン、左のパク・チョンジンが中継ぎなどで主に起用され、2016年に活躍したクォン・ヒョク、チャン・ミンジェなどは不振で登板機会が減った。 

 チーム打率.287は10チーム中5位、チーム総得点737は8位、チーム本塁打数150は5位と攻撃力の高いチームとは言えなかった。打線の中心はチーム最多の37本塁打、111打点、10盗塁を記録した外国人野手ロサリオだった。生え抜きの4番打者キム・テギュンは故障もあり94試合の出場にとどまった。内野では二塁のチョン・グヌ、三塁のソン・グァンミン、ショートのハ・ジュソクが主力として活躍した。外野では28歳のヤン・ソンウが自身最多の118試合に出場し、2010年以来7年ぶりに20本塁打以上を記録したイ・ソンヨル、2016年の不振から復調し13本塁打を記録したチェ・ジンヘン、守備や走塁に定評のあるチェ・ジンヘンなどが主に起用された。また長く韓国代表として活躍してきた外野手イ・ヨンギュが負傷などで57試合の出場にとどまったが、チーム最多タイの10盗塁を記録した。
 捕手では4月にトゥサンからトレードで移籍したチェ・ジェフンが103試合に出場したが、終盤は他の捕手が先発出場する試合が増えるなど、全般の信頼を得たとはいいがたかった。ハンファは代打の打率.281が10チーム1位だったが、これは選手層が厚かったというよりも、先発出場の選手と控え選手の差が小さかったと言ったほうが正確かもしれない。イ・サングン監督代行となってから若手の起用は盛んだったが、23歳のハ・ジュソク以外、投打ともに主力になったといえる選手が見当たらず、世代交代が今後の課題として急務となっている。


 
3. 【オフシーズンの動向】
 レギュラーシーズン終了後、11月にハン・ヨンドク新監督の就任が発表された。キム・ウンニョン(2013〜2014年)、キム・ソングン(2015〜2017年5月)と、70歳以上の監督通算勝利数史上1位、2位の名監督を外部から招聘しても、長期の低迷から抜け出すことはできなかった。そこで現役時代にハンファの主力投手として活躍したハン・ヨンドク新監督を迎え、チャン・ジョンフン(35番)、ソン・ジヌ(21番)と2人の永久欠番に指定された名選手をコーチとして復帰させ、ハンファイーグルスとしての原点回帰を図った。
 2013年からハンファはチョン・グヌ、イ・ヨンギュなどFAを行使した他球団で実績のあるベテラン選手を複数獲得してきたが、2017年オフシーズンはそれを自重したようだった。またパク・チョンジン、チョン・グヌ、アン・ヨンミョンとFAを行使した3名の選手とはすべて再契約した。外国人選手については、ロサリオが日本プロ野球阪神へ移籍し、期待通りの成績を残せなかったオガンドとビヤヌエバは再契約を見送った。新外国人選手として投手はキーバス・サンプソン、ジェイソン・ウィーラー、野手はジャレット・ホイングと契約し、3名ともに20代で若返りを図った。


 2018年のハンファは、ハン・ヨンドク新監督のもと再出発することになった。キム・ソングン監督という劇薬をもってしても変えられなかった低迷が続くチーム体質をどのように変えていくか、ハンファや他球団でコーチとして指導してきた経験に期待が集まる。まずは10年ぶりのポストシーズン進出を目指すことになるが、投打ともに戦力不足で世代交代も課題となっているため、その道のりはかなり困難を伴うものとなりそうだ。


(文責:ふるりん