DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第7回 ネクセンヒーローズ

「つかの間の低迷?」 
2017年成績 : 69勝73敗2分(レギュラーシーズン7位)
チーム総合採点…50点


1. 【地力はあるかに思えたが…】
 主力選手の移籍や流出がありながら2016年まで4年連続ポストシーズンに進出していたが、2017年は5年ぶりに下位となったネクセンヒーローズ。その戦いを振り返る。


 2013年からチームを率いていたヨム・ギョンヨプ監督が辞任し、チャン・ジョンソク新監督が指揮することになった2017年のネクセンヒーローズ。レギュラーシーズン開幕前の海外キャンプや示範競技では、かつてヘテ・キアで活躍した伝説の選手、「風の子」イ・ジョンボム(元中日)の息子であるイ・ジョンフが18歳の高卒新人とは思えない巧みな打撃で注目され、「風の孫」と呼ばれた。

 3月31日の開幕戦ではLGに敗れ、以降4月6日のロッテ戦まで開幕5連敗となった。その中でも開幕一軍を果たしたイ・ジョンフは4月2日のLG戦で8番センターとして初めて先発出場し、3打数無安打に終わった。だが4月4日にはプロ初安打を含む3安打と活躍した。4月7日のトゥサン戦で、ソ・ゴンチャンがチーム史上初のサイクルヒットを達成し、ネクセンはレギュラーシーズン初勝利を収めた。
 イ・ジョンフは4月8日のトゥサン戦でプロ初打点・初本塁打を含む2本塁打5打点と活躍した。翌9日のトゥサン戦では。20歳の先発チェ・ウォンテがシーズン初勝利をあげるなどイ・ジョンフ以外にも若手が活躍し、4月12日のKT戦まで5連勝となった。しかし4月19日のSK戦まで6連敗となり浮き沈みが激しかった。
 カンフル剤として未勝利で防御率も15点以上と内容も悪かった新外国人投手オサリバンを二軍へ降格させ、4月30日のハンファ戦で4連勝するなど復調した。5月3日にはオサリバンを退団させ、翌4日には代役となる外国人投手ブリガム(元東北楽天)と契約し、不安の残る先発投手陣の補強を図った。開幕当初から不振が続いた2016年の最多セーブ投手キム・セヒョンは、5月7日のSK戦の9回表に同点3ランを打たれセーブに失敗すると、抑えの座をはく奪された。
 5月18日、故障で戦力になっていなかった若手左腕キム・テッキョンを交換要員に、SKからトレードで大卒新人の左腕キム・ソンミンを獲得した。レギュラーに定着したイ・ジョンフは好調を維持し打率を上げたが、チームの勝率は5割前後から思うように上がらなかった。不振で低打率にあえぐ韓国2年目の外国人野手ダニー・ドーンの代わりに、22歳の若手キム・ハソンが次第に4番や5番などクリーンアップを打つようになった。だがチームの状態は上がらず勝率5割を切り、6月6日のSK戦で敗れ7位にまで後退した。だが6月10日のキア戦まで4連勝し、勝率5割を超え6位に浮上した。
 6月30日のKT戦から7月8日のサムソン戦までシーズン最多の7連勝を記録し、一気に4位にまで浮上した。抑えにはキム・サンスが定着し、キム・ハソン、チェ・テインなどの打者も好調だった。7月7日に4番打者としても起用されたことのあるユン・ソンミンを交換要員に、不足していた左腕の補強のためチョン・デヒョンをKTからトレードで獲得した。この後は徐々に勝率を下げ再び5位へ後退し、7月18日に不振のダニー・ドーンを退団させ、7月22日に代役の外国人野手チョイスと契約した。
 またトレード期限の7月31日に抑えの座をはく奪されたキム・セヒョンと守備・代走要員のユ・ジェシンを交換要員に、一軍での実績がないソン・ドンウクとイ・スンホと2名の左腕投手を獲得した。7月の2度のトレードはともに主力を放出して未知の可能性に賭ける不確定要素の大きいものだった。結局この7月に加わった3名のうち、一軍で結果を残したのは8月に先発で1勝をあげたチョン・デヒョンだけだった。
 8月3日のSK戦まで5連勝し、4位以上との差を再び縮めた。8月13日のロッテ戦で先発チェ・ウォンテが自身初の10勝を記録した。18歳のイ・ジョンフも好調で安打を量産し、8月末まではチームも調子を維持した。この雰囲気ならレギュラーシーズン5位以上を確保し5年連続でポストシーズンへ進出するかに思われた。だが9月になると途端に勝てなくなった。
 チェ・ウォンテが9月6日のKT戦を最後に故障で戦線を離脱すると、先発投手陣のやりくりが苦しくなり、9月8日、5位争いをしていたLGとの直接対決に敗れ6位、翌9月9日にはSKに敗れ7位に後退した。結局9月12日のKT戦まで引き分け1つを挟み6連敗となった。9月16日のNC戦では延長10回裏にオ・ジュウォンが打たれ14-15で敗れるなど、5位SKとの差は開いていった。9月17日のNC戦では4番打者に定着したキム・ハソン、走攻守に活躍したチョイスの2本塁打、ブリガムが10勝目を記録する投球で14-6と勝利したが、時すでに遅しだった。
 天候にあまり左右されない高尺スカイドームを本拠地とするネクセンは雨天などによる試合中止が他チームより少なく、追加日程の9月19日以降は5試合しか残っていなかった。9月21日のKT戦で勝利し勝率5割に復帰、6位に浮上し望みをつないだ。しかし残りの4試合すべて敗れてしまい、6位LGとは0.5ゲーム差の僅差ではあったが、7位で2017年シーズンの戦いを終了した。レギュラーシーズン最終戦となった10月3日、敵地・大邱でのサムソン戦はプロ野球界の発展に貢献した偉大なる打者イ・スンヨプ引退試合であり、チョイスの韓国初となる3打席連続本塁打は、イ・スンヨプの現役最後の本塁打の前にかすんでしまった。
 

 2017年シーズン、終盤の思わぬ失速によりポストシーズン進出を逃したが、シーズン中の7月の2件のトレードが本当に有意義なものだったのか、大きな疑問符が付いた。



2. 【チーム分析】
 2017年のネクセンは明確な弱点もなかったが、かといって上位チームと対等に渡り合うための強みも少なかった。


 チーム防御率5.03は10チーム中7位で、先発の防御率4.78、リリーフの防御率5.49はともに6位だった。20歳のチェ・ウォンテがチーム最多の11勝を記録し、初の2ケタ勝利と大きな成長を遂げた。5月のシーズン途中入団だったブリガムも10勝と結果を残した。38歳のベテラン外国人投手バンヘッケン(元埼玉西武)は8勝止まりで、さすがに年齢による衰えは隠せなかった。2016年は15勝を記録しながら一時期先発からも外れたシン・ジェヨンも6勝にとどまり、他にはハン・ヒョンヒィ、キム・ソンミン、チョ・サンウなどが先発として起用されたが目立った結果を残せなかった。
 リリーフ陣では、7月にキアへトレードされたキム・セヒョンは抑えとして結果を残せなかったが、チーム最多の60試合に登板し7勝15セーブ9ホールドを記録したキム・サンスが中心となった。右のイ・ボグン、左のオ・ジュウォンがともにチーム最多の18ホールドと、中継ぎでは欠かせない存在だった。他にもクム・ミンチョル、ユン・ヨンサム、ハ・ヨンミンなども起用されたがあまり層は厚くなかった。 


 チーム打率.290は10チーム中4位、チーム総得点789は3位、チーム本塁打数141は8位と一発の迫力にはやや欠けたが得点力は決して低くなかった。特筆すべきは高卒新人ながらレギュラーシーズン全144試合に出場、チーム最多タイの179安打、打率.324、12盗塁を記録したイ・ジョンフで、新人王を受賞しただけでなく、プロ野球の新人のシーズン安打記録を更新し大きな話題を集めた。4番に定着した22歳のキム・ハソンはチーム最多の23本塁打・114打点を記録したが、ショートの守備では10チーム中最多の18失策と課題を残した。その他にはチーム最多タイの179安打を記録した二塁手ソ・ゴンチャン、78打点を記録した三塁手キム・ミンソンが主力として活躍した。
 また7月のシーズン途中入団だったチョイスは17本塁打と長打力を発揮し、2010年以降7年ぶりの本塁打を記録したチャン・ヨンソクは8月以降レギュラーに定着し、自己最多の12本塁打を記録した。その他では外野のコ・ジョンウク、イ・テックン、ホ・ジョンヒョプ、一塁のチェ・テインなども欠かせない存在だった。捕手はパク・トンウォンが最多の103試合に出場したが、20歳の若手チュ・ヒョサンも64試合に出場するなど、将来を見据えた起用がなされた。


 2017年のネクセンは全体的に何か一つ足りない印象で、8位ハンファ以下とは大きな差がついてはいるが、過去5年では最低の7位で終わった。


3. 【オフシーズンの動向】
 オフシーズンで最も話題を集めたのは、2015年まで4年連続本塁打・打点の二冠王として活躍し、2016年以降はMLBミネソタツインズに所属していたパク・ピョンホの復帰である。これにより、同じ一塁手であるチェ・テインはFA(フリーエージェント)を行使したがネクセンに再契約する気がなく、いったん契約した後にロッテへトレードで移籍した。交換要員は一軍出場のない20歳の左腕パク・ソンミンだった。余剰戦力を対象とした2次ドラフトでは他球団から誰も指名せず、KTから指名されたクム・ミンチョルなど3名の選手が移籍することになり、6億ウォンの移籍金を得ることができた。
 外国人選手については、38歳のバンヘッケンとは再契約せず、新外国人投手として2015年8月から2016年7月までハンファに在籍したエスミル・ロジャースと契約した。一方結果を残したブリガム、チョイスとは再契約した。


 2018年のネクセンは、チャン・ジョンソク監督にとっては2年目で、勝負をかけることになる。2017年はチームが弱体化したというよりイ・ジョンフなど新戦力が台頭し主力となっていく中で上位に残るには少し足りない部分が出てしまったので、これまでの路線を継続していけばおのずから結果は出ると思われる。2008年3月に球団が創設され10年が過ぎようとしている。まずは2年ぶりにポストシーズンへ進出し本拠地・高尺スカイドームでの初の韓国シリーズ開催、そして初優勝となるであろうか。


(文責:ふるりん