DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第6回 トゥサンベアーズ

「失われたチームカラー」 
2014年成績 : 59勝68敗1分け(公式戦6位)
チーム総合採点…45点


 2013年はポストシーズンを勝ち抜き韓国シリーズ準優勝ながら、オフシーズンにイ・ジョンウク、ソン・シホン、チェ・ジュンソクの3人の主力選手がFAで流出した2014年のトゥサンは、日本出身のソン・イルス新監督(日本名:石山一秀)に困難なチームの運営が託されることになった。

 
 ホン・ソンフン、キム・ヒョンス、ミン・ビョンホンなどがそろう打線は強力で、米国メジャーリーグで実績のある新外国人カントゥも5月11日までに10本塁打と期待通りの活躍を見せた。だがニッパート、ユ・ヒィグァンを除く先発陣が振るわず、大きな連勝はなく勝率5割前後をさまよっていた。5月後半調子を上げ勝率6割に近づき首位サムソン、2位NCに迫ったが、5月31日のロッテ戦でプロ野球新記録となる29被安打を浴び、23失点で大敗すると調子は落ちていった。
 6月22日のキア戦で、2試合連続降雨コールドで敗れ5連敗となり、勝率5割を切ってしまった。そして6月28日のネクセン戦で敗れ勝率5割を切ると復帰することはなかった。7月上旬、抑えを任されていたイ・ヨンチャンがドーピング違反で10試合の出場停止を科され、投手陣のやりくりは苦しくなった。7月10日のLG戦は13-12で勝利し、この試合で外国人投手ボルスタッドが自身5連敗から脱出したものの、これまでの投球内容が芳しくなかったため退団となった。
 先発、リリーフともに手薄なため、順位は5位のままだったがじりじりと勝率5割や上位からも遠ざかりだした。7月末、新外国人投手マヤと契約し投手陣のテコ入れを図ったが、8月3日4連敗でLGに抜かれ6位に後退した。一時5位に浮上したが、8月15日にはキアに抜かれ7位にまで後退するなど、苦戦が続いた。8月後半から勝率4割5分前後でLG、ロッテ、キア、SKと混戦の順位争いとなり、ポストシーズン進出可能な4位確保が最大の目標となった。
 しかしまったく勝てなくなったノ・ギョンウンを先発で起用し続けなくてはならないなど、先発投手陣の薄さが響き、勢いに乗り出したLGを追撃できなくなっていった。9月上旬まで5位を保っていたが、調子を上げてきたSKに抜かれ6位に後退した。仁川アジア大会による中断期間を終え、10月5日4連敗で7位に後退し、4位進出はかなり厳しくなってしまった。再び6位に浮上したものの、10月11日のLG戦で2-15と大敗し、4位進出の可能性がなくなってしまった。シーズン最終戦となった10月17日のNC戦は、延長12回裏キム・ジンヒョンのサヨナラタイムリーで勝利し、ロッテを1ゲームだけ上回り6位を確定させ、苦難のシーズンを終えた。
 トゥサンは「トゥクシム(土壇場で見せる力)」がチームカラーだとされてきた。しかし2014年は終盤たいした見せ場もなく、過去10年間で最低の6位に終わった。2013年は二軍監督だったが、日本でも韓国でも監督経験のないソン・イルス監督に、戦力が流出しチーム力が低下していた難局を乗り切ることは最初から厳しい注文だったのかもしれない。


 チーム防御率5.43は9球団中6位、失点733は7位と、投手力が上位進出の妨げになったことは間違いない。韓国4年目の外国人投手ニッパートは14勝、左腕ユ・ヒィグァンは自己最多の12勝と、軸となる先発投手はいたものの、3番手以降が弱かった。2012-13年と2年連続2ケタ勝利を記録したノ・ギョンウンは7月以降8連敗でまったく勝てず、3勝15敗で最多敗戦投手となってしまった。期待された外国人投手ボルスタッドは内容も悪く5勝どまりで帰国した。代役の外国人投手マヤも2勝どまりだったが、9月以降好投する試合もあり再契約に至った。
 リリーフ陣も層は薄かった。その中で大卒3年目のユン・ミョンジュンが7勝15ホールドと右の中継ぎとして活躍し、高卒2年目の左腕ハム・トクチュも後半一軍に定着した。またサイドハンドのオ・ヒョンテクも自己最高の成績を残した。右のチョン・ジェフン、左のイ・ヒョンスンのベテランに頼る部分が大きく、ドーピング使用による出場停止もあった抑えのイ・ヨンチャンは17セーブ止まりで、セーブ失敗も7度と少なくなかった。

 チーム打率.291は9球団中4位だったが、広い蚕室野球場を本拠地としていることでチーム本塁打が108と7位と迫力を欠き、得点687は6位にとどまり、上位球団との差は顕著だった。チーム盗塁数111は5位と、あまり特徴のない打線だった。その中でもミン・ビョンホンが最後まで首位打者争いに加わり打率.345、12本塁打、79打点と自己最高の成績を残した。ベテランのホン・ソンフンはチーム最多の20本塁打、左打者キム・ヒョンスがチーム最多の90打点と、主軸打者は健在だった。外国人打者カントゥは前半本塁打を量産していたが、後半は調子を落とし18本塁打にとどまった。
 その他自身初の公式戦128試合全試合出場を果たした外野のチョン・スビン、自己最多の122試合に出場したショートのキム・ジェホなど、FAで流出したイ・ジョンウク、ソン・シホンの穴を埋める人材はいたが、控えが弱くなり選手層は薄くなっていた。他にもチーム最多の33盗塁で攻守に活躍したセカンドのオ・ジェウォン、ゴールデングラブ賞捕手部門を受賞したヤン・ウィジが目立っていた。


 結局ソン・イルス監督はたった1年で退任となり、前任だったキム・ジヌク監督の2年よりも短命政権で終わった。トゥサン出身でバッテリーコーチなどの経験があるキム・テヒョン新監督が就任し、失なわれたチームカラーを取り戻すことになった。
 オフシーズン最大の話題は、FAでロッテからプロ通算85勝の先発左腕チャン・ウォンジュンと4年総額最大84億ウォンで大型契約を結んだことだった。だが人的補償で生え抜きの経験豊富なリリーフ右腕チョン・ジェフンが指名された。また抑えのイ・ヨンチャン、サードを主に守ってきた内野のイ・ウォンソクの軍への入隊もあり、若手の発掘が急務となる。外国人選手はニッパート、マヤの投手2名と再契約し、2014年レギュラーが固定できなかったサードを守れるザック・ラッツ内野手(元東北楽天)と契約した。
 7年余りの長期政権だったキム・ギョンムン監督(現NC)の退任後、監督交代が相次ぎチームとしての一貫性が弱くなっている。かつて大きな外部からの補強がなくとも、自前で若手を育て上位争いに加わるトゥサンベアーズのチームカラーをどのように取り戻していくのか、キム・テヒョン新監督の手腕に注目したい。
 
 
(文責:ふるりん)