DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  1月25日  SKワイバーンズ(日本・高知市営球場)

 2011年も始まって1ヶ月近くが経ち、球春の足音が徐々に近づいてきました。
 今回は、2010年3度目の韓国シリーズ優勝を成し遂げた最強軍団、SKワイバーンズの春季キャンプについてご報告します。

 キム・ソングン監督の就任後、2007年から5年連続で四国・高知市で春季キャンプを実施しているSKワイバーンズ。
 2011年のキャンプは1月12日に始まり、2月14日まで実施されます。

 この日の南国・土佐はよく晴れていました。
 玄関口・高知龍馬空港や、高知城に近い宿舎も歓迎ムードです。

 そして鏡川の南岸にある高知市営球場や、その横のサブグラウンドで寒空の下SKの選手たちが汗を流していました。中には、いったんサムソンと契約したものの身体検査で引っかかり破棄され、キャンプに参加しSKのテストを受けている金村暁投手(元阪神)の姿も見られました。



 この日は在日韓国人キム・ソングン監督が、高知市の高校の「職業ガイダンス」に出席し、高校1年生のクラスで「野球の監督」についての講演をするとのことで、地元の方のご好意により管理人も特別に拝聴させていただきました。
 監督はこういった場で話すのは初めてだとおっしゃっていましたが、徐々に話すのに慣れてくると、ご自信の人生や野球哲学について1時間20分ほど熱弁をふるいました。

 キム・ソングン監督は1970年ごろから韓国の実業団野球で監督人生のスタートを切り、1982年韓国プロ野球がスタートするとOB(トゥサンの前身)で投手コーチに就任すると、84年には監督に就任しました。その後太平洋、ヘテ、サンバンウル、サムソン、LGで監督を歴任し、低迷していたチームを引き上げる手腕に定評があり、2007年からSKの監督に就任すると、4年連続韓国シリーズ出場、3度の優勝に導きました。
 監督勝利数歴代2位(2010年終了時点で987勝)を記録しているキム・ソングン監督の言葉には、ゆるぎない信念が感じられました。
 その中で印象に残ったものをあげると、

「SKは世界一練習しているチームであり、小さなミスをしたら徹底的に試合後練習させる。練習や授業は時間稼ぎではない。そう思うと労働になる。参加する中で何をすべきか、目標は何かを考える。SKの監督就任当時は何もない8チーム中6位のチーム(2006年の成績)だった。今や年俸2億ウォン以上が3人から14人に増えた。それはとてつもない練習によるものだ。」

「自分は弱小球団ばかり率いてきた。だからそのチームに合ったチーム作りをする。たった1000円しかなくても、10000円持っている相手にどうやって勝つかを考える。」

「勝つには、ベース付近30センチの間隔が最も大切である。走者へのワンタッチ、オーバースローでベース付近に投げるという基本的なことができるか。野球とはその30センチの取り合いなのである。この二つが常にきちんとできるかどうかで年間10〜15勝は違う。」

「シーズン中は、データ解析にかなりの時間をあてている。レストランに行くと余分な時間がかかるから、ホテルでも朝食は部屋で取る。それだとおいしくないが、トップとはそういうもの。孤独でもある。試合に行く前にはトレーニングをして、監督として戦えるようにしている。トップは過程より結果を求められる。妥協、弁明、満足があると途中で止まってしまうので、自分はこれらを特に嫌う。優勝が決まった時点で過去は記録になる。翌日から次に向けた戦いは始まっている。」

「先入観や固定観念はいけない。高い木ほど枝がなく、低い木ほど枝が多い。自分は道のないところを歩む開拓者でもある。道のあるところに道はない、とイ・スンヨプ(2011年よりオリックス)にも言った。1ゲームで投手を8人投入することもあるし、最初の1回で交代させることもある。批判を受けることもあるが、それで優勝し続けている。」

「選手は子どものようなもの。病気やけがだと心配になる。子を育てる親の気持ちと同じ中には、肩が弱い、足が遅い者もいる。ではどうすれば欠点を克服でき、潜在能力を引き出せるか。成功する人は試行錯誤が多い。一球二無という言葉を選手たちによく投げかけている。」


 講演終了後は、監督の話を熱心に聞いていた生徒たちに、監督からサインボールのプレゼントもありました。

 現在68歳と、自分の両親よりもおそらく年上であろうキム・ソングン監督の含蓄のある言葉を、生徒たちはどのように受け止めたのでしょうか。
 ある生徒に話を聞いたところ、「陰でも努力することの大切さ」を学んだとのことでした。
 このブログをご覧になっている皆様も、監督の言葉から学ぶものは多いと思います。


 貴重なお話を聞かせていただいたあと、この日は野球場近くのよさこいドームでの夜間練習も見学しました。

 若手選手とチョ・ドンファ選手が個人練習にいそしんでいて、夜7時半から9時まで熱心に汗を流していました。

 監督が在日韓国人ということもあり、加藤初、芹澤裕二といった以前から指導している日本人コーチ以外にも、2011年から田代富雄コーチが加わり、チーム内では日本語がどの球団よりもよく聞こえます。
 さらにキャンプ期間だけの臨時インストラクター(小早川毅彦清家政和、小林晋哉など)もいて、夜間練習を熱心に見守っていました。

 SKのキャンプレポートはもう1回ありますので、そちらは後日掲載します。

(文責 : ふるりん