DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第6回 ヒーローズ

「新球団の2年目、その未来は?」 
2009年成績 : 60勝72敗1分け(公式戦6位)
チーム総合採点…55点

 2008年、新球団としてスタートしたが、メインスポンサーのウリタバコの撤退などグラウンド外の騒動ばかりが目立ったヒーローズ。2009年シーズンは新球団の2年目ということで、初の公式戦4位以上、ポストシーズン進出を目指した。その戦いを振り返りたい。

 初年度を7位で終えた2008年オフ、チャン・ウォンサムのトレード騒動などで揺れたヒーローズは、初年度大幅にカットした主力選手の年俸を引き上げた。サードのレギュラーだったチョン・ソンフンがFAでLGへ移籍し戦力の低下が懸念されたが、ハンファを退団した外国人野手クラークと契約するなど、補強も怠らなかった。また選手たちの大半が所属していた現代最後の監督だったキム・シジン新監督の就任で、選手たちの士気も上がると思われた。開幕前には球団創設2年目にして初となる海外春季キャンプを米国、日本で実施した。

 4月4日、敵地・釜山でのロッテとの開幕戦は黒星スタートだったが、翌5日から、本拠地・木洞野球場での開幕3連戦となったサムソン戦を含めて4連勝した。だが10日のSK戦で3連敗するなど開幕ダッシュとは行かず、21日のハンファ戦から5連敗し、最下位争いに加わるようになった。4月は10勝12敗と負け越し、首位SKとは5ゲーム離された5位で終えた。

 5月になるとチーム状態は悪化し、5日のキア戦から引き分け1つをはさんで9連敗となってしまった。特に8連敗目となった15日のLG戦は史上最大の乱打戦となり、4回を終えた時点でヒーローズが13−5で8点をリードしていたが、7回に逆転されてしまい、17−16とリードされてしまった。結局試合は17−22でヒーローズが敗れ、木洞野球場のスコアボードには39得点、40安打が刻まれた。弱体投手陣ヒーローズを象徴するかのような試合で、チームはこのとき最下位に沈んでいた。しかし下旬になると6連勝と息を吹き返し、5月は11勝14敗1分けと負け越したが、最下位を脱出し6位で終えた。

 6月は2日のサムソン戦から4連敗したが、主砲ブランボー(元オリックス)の好調もあり、これ以外目立った連敗はなく、調子を上げていった。7日にはLGを抜いて5位に浮上し、混戦の4位争いに加わるようになった。手薄だった投手陣も、高卒新人カン・ユング、セットアッパーのイ・ボグンの台頭でだいぶ楽になり、ファン・ジェギュン、カン・ジョンホなど若手野手の活躍も目立った。21日には4位にまで浮上し、1ヶ月前には勝率3割台前半だったのが、4割台後半となりチームは活気付いていた。月末ロッテに抜かれ5位となったが、6月は13勝11敗と勝ち越した。

 7月は梅雨時で前半は雨天中止が相次ぎ、6月の勢いをつなげられず8日には6位に後退した。徐々に勝率も下がり、ロッテ、サムソンが勝率5割前後で争っていた4位争いからもずるずる後退していくかのように思えた。7月は6勝11敗と負け越し、5位サムソンとは4.5ゲーム差の6位で終えた。

 8月は大きな連勝こそなかったが、最多勝争いに加わっていたイ・ヒョンスン、先発に転向していたファン・ドゥソンの好調もあって、徐々に勝率を5割に近づけ、調子が落ちたサムソン、ロッテとの差をつめていった。そして月末にはヒーローズ、ロッテ、サムソンの3チームが2ゲーム前後にひしめく混戦となり、4位争いは過熱していった。8月は13勝9敗と勝ち越し、6位から浮上できなかったものの、終盤戦に向けて確かな手ごたえをつかんでいた。

 ヒーローズはロッテ、サムソンと比べて雨天中止の試合が多く、追加日程により試合日程が編成された9月は比較的厳しいスケジュールとなっていた。9月2日、5位サムソンとゲーム差なしで並んだが、翌3日最下位ハンファ相手に逆転負けを喫すると、6日サムソンとの直接対決に敗れ、9日まで3連敗となり4位争いから後退しはじめた。そして15日から20日までの6連戦にはサムソン、ロッテとの直接対決が残っていて最後の望みをつなごうとしたが、なんとここで6連敗してしまい、単独6位が確定しポストシーズン進出に失敗した。
 そして公式戦最後の3試合も3連敗で終え、ハードスケジュールだった9月に6勝15敗と負け越してしまい、肝心な終盤になって選手層の薄いチーム全体が息切れしてしまった形となった。特に前半は本塁打を量産していた主砲ブランボーが、故障もあって当たりが止まってしまったのが痛かった。4位争いのライバルだったロッテには9勝10敗、サムソンには7勝12敗と負け越し、優位に戦いを進められなかった。また24日のキア戦で完封負けしたことで、相手に12年ぶりの公式戦優勝を決めさせてしまった。


 投打の成績をふりかえる。

 チーム防御率5.45は8球団中7位、失点762は6位と、弱体投手陣が上位進出に失敗した大きな要因だった。先発の柱となったのは、先発転向2年目でチーム最多の13勝をあげたイ・ヒョンスンで、初の2ケタ勝利で大きな成長を見せた。だが右のエースとして期待されていたキム・スギョンが6勝11敗、防御率6点台の成績に終わり、それに続く先発が弱かった。過去3年間先発ローテーションを守っていた左腕チャン・ウォンサムも4勝どまり、2008年は11勝をあげた左腕マ・イリョンも5勝どまりと、故障もあったがこの2人は大きく期待を裏切った。誤算続きの中、8月以降リリーフから先発に転向したファン・ドゥソンが8勝し、ベテランらしい安定感を見せた。

 先発陣のチーム防御率が5.89だったのに対し、リリーフ陣は4.89と比較的健闘した。2ケタセーブをあげた選手が8球団中唯一ゼロで、守護神の不在を中継ぎ陣の奮闘で何とかカバーした。特にプロ5年目で大きく成長しリリーフだけで7勝をあげた右腕イ・ボグン、高卒新人ながら先発でも起用された左腕カン・ユングが目立った。また右のソン・シニョン、シン・チョリンは毎試合のように投げ、2004年の新人王だったがその後あまり目立たなかった左腕オ・ジェヨンも中継ぎとして復活を見せた。
 正捕手の座はカン・ギィテが102試合に出場し、40歳のベテラン捕手キム・ドンスが2009年シーズン限りで引退しコーチ業に専念することもあり、ほぼ手中に納めた形となった。だがリード面などで不安があると言われ、ユ・ソンジョンなどの若手にもチャンスがある。

 打線を見ると、チーム打率.272は8球団6位だったが、本塁打数(153本)は4位、得点(683)は5位と上位チームより大きく劣ることはなく、特に盗塁数(192個)は1位と、狭い木洞野球場を本拠地としているが機動力を使った野球が特徴的だった。チーム最多のイ・テックン(43個)だけでなく、ファン・ジェギュン、キム・イルギョンと30盗塁以上の選手を3人そろえていた。
 ブランボー、クラークの外国人コンビ、走攻守そろった外野手イ・テックン、ベテラン外野手のソン・ジマン、ファン・ジェギュン、カン・ジョンホの22歳の若手三遊間コンビなど、上位から下位まで比較的切れ目のない打線が構成され、20本塁打以上の選手が4人と、他球団の脅威となっていた。特にチーム最多の90打点を記録し、外国人選手として2人目となる20本塁打、20盗塁を記録したクラークが打線の軸となっていた。
 
  2009年のシーズンオフは、前年にもまして大きな動きがあった。まず最初に、個人通算最多盗塁記録の保持者で、史上唯一となる2000安打、2000試合出場を達成している40歳のベテラン外野手チョン・ジュンホなどを放出し、チームの若返りを図った。そしてチーム最多の27本塁打を記録したものの、故障による衰えが明らかなブランボーとも再契約しなかった。

 そして12月中旬、KBO(韓国野球委員会)へ支払うべき加入金36億ウォンのうち、15億ウォンずつを直接トゥサン、LGに本拠地補償金として支払ったとして、物議をかもした。これによりいったん合意に達していたイ・テックンのLGへのトレードも承認が留保されたが、12月末KBOにより2008年から分割払いとなっていた加入金120億ウォン全額が納入されたとして事態は解決となった。そしてイ・テックンが金銭25億ウォンと無名選手2名との交換でLGへ、チーム最多勝のイ・ヒョンスンが金銭10億ウォンと若手左腕クム・ミンチョルとの交換でトゥサンへ、そしてチャン・ウォンサムが金銭20億ウォンと中継ぎ投手2名との交換でサムソンへとトレードされ、一気に主力選手3名を放出した。

 これはメインスポンサーが1年以上をかけても見つからず、小口のサブスポンサーばかりで経営が苦しいヒーローズが当座の運営資金を稼ぐためのものとされていて、KBOは2010年末まで選手の金銭トレードを禁じたものの、球団の今後が大いに不安視されている。韓国プロ野球史上初めて、特定企業の所有物となっていない球団経営方式は、今のところ成功しているとは言い難い。最悪の不人気球団だった現代ユニコーンズをほぼそのまま受け継ぐ形でスタートしたため、ソウルの第3球団という立場や、観客動員がビジター球団頼みで、苦しい面が多いのは仕方がないが、このままでは8球団制の維持というプロ野球界の前提が崩れる可能性もあり、ヒーローズの先行きを明るくすることが、プロ野球界の更なる発展につながるだけに、2010年の早いうちに何とか解決してほしい課題ではある。なお、チーム名を「ソウルヒーローズ」に変更する案があり、すでに通称としては使われているが、KBOの正式な承認は今のところ下りていない。

 暗い話題ばかりだが、新外国人選手として左腕バーンサイド(元読売)と契約し、クラークとも再契約したため、主力選手を失ったとはいえ、若手の成長次第ではポストシーズン進出も不可能ではない。木洞野球場一番の人気者となった個性的なマスコット・トクトリだけがさまざまなパフォーマンスでファンを喜ばせるのではなく、肝心のグラウンド上の選手たちが勝利の美酒でファンを心から酔わせる日が来るのであろうか。

 
[チームMVP]
ファン・ジェギュン

(2009年シーズン成績)
133試合 打率.284 18本塁打 63打点 30盗塁

 現代在籍時から才能の片鱗を見せていたが、2009年シーズンはショートからサードに転向し、レギュラーに定着してから走攻守そろった大型内野手に成長した。主に1,2番の上位打線を任され、見事公式戦全133試合出場を果たし、同じ22歳のカン・ジョンホと8球団で最も活きのいい三遊間を組んだ。2010年シーズンは、11月のアジア大会韓国代表に選ばれ、優勝して兵役免除を勝ち取るのが最大の目標となる。

   
[ワーストプレイヤー]
チャン・ウォンサム
(2009年シーズン成績)
19試合 4勝8敗 防御率5.54

 開幕前WBC(ワールドベースボールクラシック)韓国代表に選ばれ、2次ラウンドの順位決定戦で先発したが、あまり内容はよくなく、そのときの不調を公式戦にも引きずってしまったか、プロ4年間で最低の成績に終わり、左腕エースの不振がヒーローズを6位にとどめた大きな要因となった。オフには1年前トレードされるはずだったサムソンへ移籍し、新天地で復活をかける。