DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

   韓国シリーズ第7戦  キア、ナ・ジワンのサヨナラ本塁打で12年ぶり10度目の韓国シリーズ優勝

2009年 韓国シリーズ 第7戦
SK 5−6 キア  (ソウル・蚕室)
(勝)ユ・ドンフン 2勝1S  (敗)チェ・ビョンニョン 1勝1敗1S
本塁打) SK : パク・チョングォン 2号  キア : ナ・ジワン 1,2号、アン・チホン 1号

 勝ったほうが優勝となるSKとキアの韓国シリーズ第7戦は、第5,6戦に続いて中立地のソウル・蚕室野球場に29000人の超満員の観衆を集めた。


(始球式をつとめた女優のイ・ボヨン。)


 試合はキアの先発がガトームソン(元東京ヤクルト)、SKの先発がグローバー(元読売)で始まった。SKは1回表先頭の1番パク・チェサンがヒットで出塁し、2番チョン・グヌがバントで手堅く送ったが、後続が断たれ無得点に終わった。グローバーは快調に飛ばし3回までパーフェクトに抑えた。
 SKは4回表先頭のチョン・グヌがヒットで出塁すると、続く好調の3番パク・チョングォンがレフトポール際にファールかと思われる当たりを打ったところ、風に乗りなんと先制2ランとなった。続く4番パク・チェホンも2塁打を放ち、ここでガトームソンは2番手ハン・ギジュに交代となった。続く代打キム・ジェヒョンにもヒットを打たれたが、何とか追加点を許さなかった。


(4回表パク・チョングォンの2ランでSKが先制。)

 SKは5回表先頭の8番チェ・ジョンが四球で出塁し、続く9番チョ・ドンファのバントを2塁へ送球したらセーフとなり、パク・チェサンもバントできっちり送り1死2,3塁とした。ここでチョン・グヌにユニフォームをかすめる死球を与え、満塁のピンチとなったところでキアは3番手ヤン・ヒョンジョンを登板させた。ここでパク・チョングォンはセカンドゴロとなったが併殺は取られず、3塁走者が生還しSKはこの回ノーヒットで1点を追加した。
 キアは5回裏先頭の4番チェ・ヒィソプがチーム初ヒットを打ち、5番キム・サンヒョンの内野ゴロの間に2塁へ進んだ。6番イ・ジョンボム(元中日)は三振したが、7番アン・チホンのタイムリーで1点を返し、8番キム・サンフン、9番イ・ヒョンゴンに連続四球を与え、勝利投手の権利まであと1人となったところでグローバーは2番手イ・スンホ(背番号20)に交代した。2死満塁のチャンスで1番イ・ヨンギュは三振し、キアは同点のチャンスを逃した。
 するとSKは6回表ヤン・ヒョンジョンが1死2,3塁のピンチを招き、代打キム・ガンミンの犠牲フライ、パク・チェサンのタイムリーで2点を追加し、5−1とリードを4点に広げた。SKの継投陣なら十分逃げ切れる点差かと思われたが、キアはその裏ナ・ジワンがバックスクリーン左側に2ランを放ち、3−5と2点差に追い上げ、試合はわからなくなった。イ・スンホは1死後キム・サンヒョンに四球を与えたところで、3番手門倉(元読売)に交代した。ここでキアはチームの顔、イ・ジョンボムに代えてチャ・イルモクを代打に送ったが、フルカウントから三振、盗塁失敗のゲッツーと最悪の結果に終わった。

 SKは7回表キアの5番手クァク・チョンチョルから途中出場の5番イ・ジェウォンが2塁打を打ったが、追加点を奪えなかった。するとキアはその裏門倉から先頭のアン・チホンが左中間深くにソロ本塁打を打ち1点差に詰め寄ると、途中出場の8番チェ・ギョンファンが3塁打でチャンスを作った。ここでSKは4番手ユン・ギルヒョンをマウンドに送り、イ・ヒョンゴンを四球で歩かせると、さらに5番手チョン・ウラムに交代させた。イ・ヨンギュの内野ゴロで3塁走者が飛び出しはさまれアウトとなり、1死1,2塁とチャンスは狭まったかに思えた。しかしキム・ウォンソプのタイムリー2塁打でキアはついに5−5の同点に追いついた。さらに先ほどの打席で本塁打を打ったナ・ジワンを敬遠し、キアは1死満塁のチャンスを迎えたが、ここでチェ・ヒィソプ、キム・サンヒョンの大砲2人は凡退しこの回は同点どまりだった。


(7回裏、まずアン・チホンのソロ本塁打でキアが1点差に。)


(さらに7回裏、キム・ウォンソプのタイムリーで5−5の同点に追いつく。)


 キアは8回途中から、第5戦で完封勝利を飾ったロペスをリリーフで送り、総力戦に突入した。その裏の攻撃でSKの6番手チョン・デヒョンから先頭のチャ・イルモクが死球で出塁すると、SKは1死後7番手コ・ヒョジュンに交代させ、イ・ヒョンゴンに四球を与え2死1,2塁とキアは勝ち越しのチャンスを作るが、不振のイ・ヨンギュは凡退した。
 キアは9回表守護神のユ・ドンフンを登板させ、期待に応え初めてこの試合SKを三者凡退に抑えた。SKも9回裏、第6戦でキアを抑えたチェ・ビョンニョンを登板させた。キアは1死後、6回裏2ランを放ったナ・ジワンが打席に入った。するとチェ・ビョンニョンの高く浮いた6球目を振りぬくと、打球はレフトスタンドへと高々と舞い上がり、劇的なサヨナラ本塁打でキアが6−5で逆転勝ちし、前身のヘテ時代の1997年以来12年ぶり、史上最多となる通算10度目の(キアとしては初)韓国シリーズ優勝を決めた。


(ナ・ジワンが9回裏サヨナラ本塁打をレフトへ叩き込む。)


 キアは途中まで4点リードされてもあきらめることなく、終盤打者たちが粘り強くSKの投手たちに球数を投げさせ、甘い球を逃さずヒットや本塁打にし、第7戦で逆転勝利を収め、栄冠を手にした。守護神ユ・ドンフンがプロ11年目にしてポストシーズン初勝利。
 打者ではサヨナラ本塁打を含む2本塁打を打ったナ・ジワンが、この試合の活躍で韓国シリーズMVPを受賞した。ナ・ジワンは大卒2年目の24歳で、2009年公式戦では23本塁打と活躍したが、まだ首脳陣の全幅の信頼を得たとは言いがたく、この韓国シリーズではスタメン出場できない試合もあった。だが第7戦で最高の結果を出し、今後の更なる飛躍を期待させた。高卒新人ながらセカンドを守り続けたアン・チホンも、1本塁打2打点と勝利に貢献した。また投手では、第1戦、5戦で先発し2勝した最多勝投手ロペスの活躍が目立った。

 韓国シリーズ3連覇を狙ったが、最後の第7戦で力尽きたSKは、第5戦までもつれこんだトゥサンとのプレーオフからの連戦の疲れがこの試合でとうとう出てしまい、自慢の小刻みな継投が崩壊し逆転負けを許した。またキム・グァンヒョン、チョン・ビョンドゥと主力投手2人の不在も響いた。だが公式戦最後に19連勝でキアを追い詰め、プレーオフでトゥサンに2敗しながら3連勝するなどその底力を侮ることはできず、2010年シーズンも優勝争いの中心になることが予想される。

 12年ぶりの優勝を決めたキアの本拠地・光州では、市民たちが祝杯を挙げ騒ぐ姿があちこちで見られた。また、キアの選手たちはチョ・ボムヒョン監督や、12年前の優勝メンバーでチームの精神的支柱イ・ジョンボムを胴上げし、感激の余韻に浸った。


 
 開幕前のWBC(ワールドベースボールクラシック)に始まり、史上最多の約592万人の観客動員数を記録した2009年シーズンは、キアとSKのし烈な第7戦までもつれ込む韓国シリーズが盛り上がる中幕を閉じた。新球場の建設など残された課題は多いが、さらなる野球界の発展を予感させる一年であった。


(文責 : ふるりん