DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第7回 ハンファイーグルス

「消耗戦の果てに」 
2016年成績 : 66勝75敗3分(公式戦7位)
チーム総合採点…50点


1. 【消耗戦の日々】
 2016年シーズンは前半のつまずきが響き7位に終わったハンファイーグルス。その戦いぶりを振り返りたい。


 キム・ソングン監督の指揮下1年目の2015年、6位に終わったものの最後までポストシーズン進出争いに残り、オフシーズンにチョン・ウラム、シム・スチャンとFA(フリーエージェント)で2人の経験豊富な投手の補強、メジャーリーグベースボール(MLB)で実績のある大物新外国人野手ロサリオとの契約などで、2016年シーズンのハンファに対する期待値は高かった。しかし公式戦開幕を前に外国人投手ロジャースやイ・ヨンギュが故障するなど、主力の離脱で暗雲が立ち込めていた。

 不安は的中した。4月1日のLGとの開幕戦、2日のLG戦ともに延長戦にもつれ込んだ挙句サヨナラ負けとなってしまった。4月5日の本拠地・大田での初の公式戦では、1999年のこれまで唯一の韓国シリーズ優勝に貢献したク・デソン(元オリックス)の始球式があり初勝利をあげたもののその後4連敗、4月14日、2-17と大敗したトゥサン戦ではキム・ソングン監督が体調不良によりベンチを去ってしまった。結局4月20日まで7連敗と、投打ともに不調でチームは低迷を続けた。
 4月26日、開幕から20試合の時点で4勝16敗と最悪の序盤戦となってしまった。韓国人投手の信頼できる先発投手が不在で、ロジャースの離脱も大きかった。4月29日にシーズン初の3連勝と調子が上向くかに思われた。5月5日のSK戦でキム・ソングン監督が腰を痛めまたもやベンチを去ると、8日まで5連敗となかなか最下位脱出のきっかけをつかめなかった。さらに5月18日まで6連敗とさらに勝率は落ち込んだものの、19日のKT戦でロジャースのシーズン初勝利、ロサリオの本塁打で連敗を脱出すると、20日のKT戦はキム・ソングン監督の復帰を祝うロサリオの2本塁打で快勝となった。
 5月31日まで2008年以来8年ぶりとなる5連勝で調子を上げ、6月8日にはさらに6連勝と最下位脱出が見えてきた。2016年シーズンのハンファに先発ローテーションというものはあってなきが如しで、ソン・チャンシク、チャン・ミンジェ、シム・スチャンなどの投手がリリーフも先発もかわるがわるこなし消耗戦が続いた。9位KTに追いつきそうで追い越せない状況が続き、6月20日、韓国に適応できなかった外国人投手マエストリ(元オリックス)を退団させ、代役として新外国人投手カスティーヨと契約した。また24日には6月に二軍へ降格したロジャースも退団となった。カスティーヨは韓国初登板となった6月25日のロッテ戦で、最速159km/hの速球を武器に韓国初勝利をあげた。
 7月8日、もう一人の新外国人投手サーカンプと契約し、9日にはKTを抜いて単独9位に浮上した。さらに14日にはサムソン、LGを抜いて7位にまで上昇した。その後じわじわと勝率を上げて4割台半ばに乗せ、混戦の5位争いへ加わることを試みた。7月28日のSK戦で、イ・テヤンが2014年以来となる先発勝利をあげローテーションに定着したが、サーカンプに先発としての適性があまりなくリリーフでの起用が中心となりさしたる戦力にならなかった。
 8月6日には調子を上げてきたLGに抜かれ8位に後退し、その後はロッテとのし烈な7位争いが続き勝率4割5分前後にとどまった。だが9月13日までの5連勝で勝率を.472まで上げ、15日には6位SKと1ゲーム差に迫り5位争いに加わるかと思われた。しかしキア、LGと5位争いの渦中にあるチームに連敗するなど、9月22日までの5連敗で厳しくなった。その後ロッテ、サムソンとの7〜9位争いが続いた。
 10月3日のトゥサン戦、主砲キム・テギュン(元千葉ロッテ)の活躍で勝利し7位に浮上した。2016年シーズン最後の公式戦となった10月8日の本拠地・大田でのキア戦は、すでにポストシーズン進出の可能性はなくなっていたがスタンドは満員の観衆で埋まっていた。0-5から追い上げ、9回裏にチョン・グヌの本塁打などで5-5の同点に追いついた。さらにチョン・ウラムの力投で勝ち越し点を与えず、10回裏にチョン・グヌのタイムリーで6-5とサヨナラ勝ちし、2017年こそはこの先の戦いにも出なくてはならないというチームとファンの熱気に包まれながら7位を確定させ、有終の美を飾り2016年シーズンを終えた。
 


2. 【チーム分析】
 チーム成績を見ると、投手陣を中心に薄い選手層を何とかやりくりしていたのが浮き彫りになる。

 チーム防御率5.76は10チーム中9位で、クォリティースタート(先発として6回以上登板し自責点は3以下)は同最下位の25、セーブ数24、ホールド数39も最下位と投手陣の残した数字は惨憺たるものだった。チーム最多の27試合に先発し122イニングを投げたソン・ウンボムは2勝11敗と大きく負け越し、次いで25試合に先発したイ・テヤンが5勝を記録したにとどまった。その他100イニング以上を投げたチャン・ミンジェ(6勝)、シム・スチャン(5勝)、ユン・ギュジン(7勝)も先発、リリーフ両方で起用された。
 リリーフ専門の投手としては40歳ながらチームのみならずプロ野球全体で最多の77試合に登板した左腕パク・チョンジン、左腕クォン・ヒョク(6勝13ホールド)とチョン・ウラム(8勝16セーブ)、右腕ソン・チャンシク(8勝)などがあげられる。ワンポイントリリーフとしてはアンダーハンドのチョン・デフンが起用された。先発ではなくリリーフに勝ち星が多いのが特徴で、限られた投手を消耗しつくして何とか勝利を挙げていたことがわかる。外国人投手は6月から契約したカスティーヨが7勝を記録したが、好不調の波が大きく先発としては計算しにくく、チーム事情によりリリーフでの起用も多かった。またロジャース、マエストリ、サーカンプと残りの外国人投手はそれぞれ2勝ずつで戦力としては機能しなかった。
 またチームのエラー数が124と10チーム中2位で守備面のほころびも目立った。特にショートのレギュラーに定着した22歳の若手ハ・ジュソクは19失策とまだまだ粗さが目立った。


 ハンファのチーム打率.289は10チーム中7位、チーム本塁打数142は同5位だったものの、得点圏打率.301は同4位でチーム総得点826は同4位と他チームに見劣りしない攻撃力はあった。
 主砲キム・テギュンは23本塁打、チーム最多の136打点と健在で、外国人打者ロサリオもチーム最多の33本塁打・120打点と期待に応えた。また三塁のレギュラーに定着したソン・グァンミンが17本塁打と自己最高の成績を残し、中盤からショートのレギュラーに定着したハ・ジュソクも自身初の2ケタ本塁打となる10本塁打を記録した。外野では主にライトを守ったヤン・ソンウが自身最多の108試合に出場と成長が著しかった。またキアから移籍した35歳のチャ・イルモクが捕手として最多の117試合に出場した。プロ野球界最高とされるチョン・グヌ、イ・ヨンギュの1番・2番打者コンビも機能していた。
 控え野手としてはイ・ソンヨル(10本塁打)、シン・ソンヒョン(元広島・8本塁打)、チャン・ミンソクなどが起用され、キム・ソングン監督が得意とする日替わり打線で有効に活用された。


 2016年のハンファは選手層が薄いゆえ6月半ばまで最下位に低迷したが、シーズン後半は何とか盛り返し7位で終えることができた。ただし30歳以上の投手を酷使しての消耗戦が基本で、一部の野手を除いて目立った若手の台頭が見られなかった。連敗が続いたり情けない負け方を見せたりすると試合後居残り練習をさせ、遠征では試合前に近隣の高校や大学のグラウンドでノックを浴びせるなど、選手たちに大きな負担を強いていた。


3. 【オフシーズンの動向】
 近年低迷を続けていたハンファは3年連続でオフシーズンに外部からFA選手を迎えるなど派手な動きを見せていたが、2016年オフシーズンはこれといった大きな補強はなかった。2016年の外国人選手のうちロサリオとのみ再契約し、カスティーヨとサーカンプとは再契約せず、新外国人選手として180万ドルと高額年俸のアレクシー・オガンド投手と契約したが、もう1名は2月7日現在未定である。

 選手に猛練習を科しチームの引き上げに定評のある名将キム・ソングン監督は、2年連続でポストシーズン進出に失敗したことでその立場が厳しくなっている。3年契約の最終年である2017年シーズンこそ、10年ぶりとなる悲願を達成し長年続く低迷期を本当に脱したと言われるのであろうか。プロ野球界の大きな関心事の一つである。


(文責:ふるりん