DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

   北京五輪決勝、キューバを倒し史上初の金メダル獲得

韓国 3−2 キューバ  (北京・五棵松メイン野球場)
(勝)リュ・ヒョンジン 2勝  (セーブ)チョン・デヒョン 2S  (敗)ゴンザレス 1敗2S
本塁打) キューバ : エンリケ 1号、ベル 1号  韓国 : イ・スンヨプ 2号
 22日の準決勝で宿敵・日本を下した北京五輪韓国代表チームは23日、同じく準決勝で宿敵・米国を下した優勝候補大本命・キューバ代表との決勝戦に臨んだ。両チームは19日予選リーグで対決し、7−4で韓国が勝利している。また、五輪開幕前にキューバは韓国で事前合宿を行い、韓国代表と5日、6日と練習試合を2度実施し1勝1敗だった。だが前回のアテネ五輪王者にして五輪野球優勝3回のアマチュア最強チーム、キューバはここ一番に非常に強く、準決勝では米国に10−2で完勝していた。
 
 韓国の先発は、15日の予選リーグカナダ戦で完封勝利をあげたリュ・ヒョンジン(ハンファ)、キューバの先発はゴンザレスと、左腕どうしの対決だった。韓国は1回表、2番イ・ヨンギュ(キア)が内外野3人の間にポトリと落ちるヒットで2塁まで進んだ。3番キム・ヒョンスが三振に倒れ、打席には準決勝日本戦で決勝2ランを打った4番イ・スンヨプ(読売)が立った。イ・スンヨプは4球目を思いっきり振りぬくと、打球はレフトスタンドへと飛び込み、2試合連続本塁打となる2ランで韓国が先制した。その後5番キム・ドンジュ(トゥサン)も四球で出塁したが、6番イ・デホ(ロッテ)は打ち取られ勢いはそがれた。上位から下位まで一発のある打者をそろえたキューバも1回裏、2死走者なしから3番エンリケのソロ本塁打で1点を返した。だがリュ・ヒョンジンは4番セペダを三振に仕留め、崩れることはなかった。


(1回表、イ・スンヨプが2試合連続本塁打となる先制2ランを打つ。)

 韓国は2回以降追加点を取ろうとしたが、ゴンザレスはイ・スンヨプの一発以外快心の当たりを許さず、内外野ともに守備範囲も広く肩も強い鉄壁の守備陣は、難しい打球をもうまくさばきアウトにしてしまう。だがリュ・ヒョンジンと捕手カン・ミンホ(ロッテ)のバッテリーは、パワフルなキューバ打線に狙い球を絞らせず、ストレートよりもスライダーなどの変化球を降らせ、三振と凡打の山を築いていく。韓国は4回表1死からキム・ドンジュがショートのエンリケのエラーで出塁し、内野ゴロの間に2塁へ進んだが、7番コ・ヨンミン(トゥサン)が打ち取られ追加点は奪えなかった。


(力投を続けキューバ打線と真っ向勝負を続けたリュ・ヒョンジン。)

 キューバは5回裏2死から7番デスパイネが、久しぶりの長打となる左中間への2塁打を放ったが、リュ・ヒョンジンは8番デスパーノを三振に仕留め、ピンチを脱した。韓国は6回表先頭のイ・ヨンギュが四球で出塁したが、続くキム・ヒョンス、イ・スンヨプがともに凡退し、2死2塁となった。ここでキューバは2番手の抑えの切り札ラソに交代し、キム・ドンジュが四球を選び2死1,2塁と韓国はチャンスを拡大した。だが続くイ・デホの打球をセンターのドゥベルヘルが滑りながらつかみ、追加点のチャンスは鉄壁の守備に阻まれた。
 韓国は7回表ラソから9番パク・チンマン(サムソン)の外野の前に落ちそうな当たりをライトのベルが取れず、2死2塁とチャンスを作る。続くイ・ジョンウクは四球を選び、この大会打撃好調のイ・ヨンギュはライト線横に2塁打を打ち、韓国が貴重な1点を追加した。だがキューバもその裏5番ベルがリュ・ヒョンジンの低めの球をレフトへと運び、ソロ本塁打で再び1点差とした。韓国は7回途中から登板したキューバの3番手ロドリゲスから出塁すらできず、韓国の勝利はリュ・ヒョンジンの左肩へと重くのしかかろうとしていた。キューバは8回裏ペスターノのヒットで1死から走者が出たが、リュ・ヒョンジンが続く2人を打ち取り1点差を守った。


(貴重な追加点をたたきだしたイ・ヨンギュ。)

 韓国は9回表三者凡退に終わり、1点リードのまま9回裏キューバの攻撃を迎えた。ここまで本塁打2発以外は文句のつけようがない投球をしているリュ・ヒョンジンは、9回もマウンドに登った。だが先頭の2番オリベイラにヒットを許し、1回裏本塁打を打ったエンリケ送りバントで走者を2塁に進めた。さらにリュ・ヒョンジンはセペダ、ベルに連続四球を許し、1死満塁と絶体絶命のピンチを迎えた。さらにベルへの6球目がきわどい判定だったため、捕手カン・ミンホが審判に暴言を吐いたとして退場となってしまった。
 ここでリュ・ヒョンジンはマウンドを降り、2番手アンダースローのチョン・デヒョン(SK)が登板し、捕手はチン・ガビョン(サムソン)になった。ここで6番グリエルはチョン・デヒョンにタイミングが合わず、ショートゴロ併殺に倒れ3アウトとなり、試合終了で韓国が3−2と強豪キューバ相手に接戦をものにし、見事初優勝、金メダル獲得を決めた。しかも予選リーグ7戦全勝を含む9連勝と、優勝に異論のない成績だった。


(金メダルを授与され、国歌を斉唱する選手たち。)

 リュ・ヒョンジンは9回1死まで投げ、強力打線を相手に被安打5、奪三振7、2失点と力投し、新人の年からハンファのエースとして活躍したこともあり、まだプロ3年目と21歳とは思えないマウンド度胸で、韓国の初優勝に貢献した。また抑えのチョン・デヒョンも、16日の予選リーグ日本戦に続き絶体絶命のピンチからチームを救った。打線では今大会5割近い打率だったイ・ヨンギュが、貴重な追加点となったタイムリー2塁打など2安打と活躍した。また主砲として期待されながら予選リーグは不振を極めたが、準決勝、決勝ともに2試合連続決勝本塁打を打ったイ・スンヨプは、相変わらずの大舞台での強さを発揮した。

 今回の韓国代表チーム24名中、イ・デホ、リュ・ヒョンジン、コ・ヨンミン、キム・ヒョンス、イ・ヨンギュ、キム・グァンヒョン(SK)など14名が兵役を終えていない若い選手だったが、規定により五輪でメダルを獲得したため、兵役免除されることが確実となった。兵役免除という特恵が選手たちを奮起させた要因の一つになっていることは間違いがなく、そのためにイ・スンヨプ、キム・ドンジュなどの過去の国際大会で結果を残し兵役免除となったベテランの選手たちが、若い選手に兵役を免除させたいと真剣に思い戦った。また韓国球界が一丸となって、普段のプロ野球の試合で国際公式球を使用し、8月に入って公式戦を中断するなど、現時点で最後となる五輪野球で優勝するために全力を尽くした。キム・ギョンムン代表監督(トゥサン)を中心とした首脳陣も、大胆かつ緻密な采配でチームを勢いづけた。
 今回の韓国代表の快挙は、国際大会で頂点を極めようとする代表チームのあり方の好例を示したと言える。その根底には、2003年のアテネ五輪アジア地区予選で台湾、日本に敗れ本大会に出場できず、2006年WBC(ワールドベースボールクラシック)は準決勝まで進みながら、準決勝の日本戦に敗れて決勝に進出できなかったなど、過去の国際大会での無念さがあったのではないか。

 なお韓国に敗れたキューバは銀メダル、3位決定戦で日本に勝利した米国が銅メダルを獲得し、北京五輪野球は全日程を終了した。

 北京五輪での韓国代表チームの快進撃に国民は酔いしれ、23日の夕方からソウル・蚕室野球場、釜山・社稷野球場では観客席が開放され、応援イベントが開催され多くのファンたちが北京へ届けと声援を送った。今月26日から、いよいよプロ野球の公式戦が再開される。金メダルという最高の成果をあげた韓国代表選手たちは、これからは各自の所属チームに戻り、世界の頂点に立った選手としての自身と誇りにあふれたプレーで、野球ファンたちを熱狂させ、プロ野球の更なる発展に尽くしてほしい。


(蚕室野球場では、満員の観客が韓国代表の優勝を願い声援を送り続けた。)
(文責:ふるりん)