2021年韓国シリーズ:KTウィズ-トゥサンベアース、メディアデー開催
2021年プロ野球ポストシーズンはいよいよ年間優勝を決める韓国シリーズへと入り、レギュラーシーズン優勝・KTウィズと、サムソンライオンズとのプレーオフを勝ち抜いたトゥサンベアースの対戦となった。気温が上がらない11月中旬以降の開催のため、全試合中立地の室内のソウル・高尺スカイドームで開催される。
韓国シリーズ開幕を前日に控えた11月13日14時より、高尺スカイドームにて韓国シリーズ恒例のメディアデーが実施された。KTからはイ・ガンチョル監督とファン・ジェギュン、カン・ベッコ、トゥサンからはキム・テヒョン監督とパク・セヒョク、ヤン・ソックァンが出席した。席上で第1戦の予告先発が発表され、KTはクエバス(※ 23試合・9勝5敗・防御率4.12)、トゥサンはクァク・ピン(※ 21試合・4勝7敗・防御率4.10)と発表された。
先に4勝したほうが2021年シーズンの年間優勝となる。9回を終えても同点の場合延長戦となり、15回を終えても決着がつかなかった場合は引き分けとなる。KTは初優勝、トゥサンは2年ぶり7度目の優勝を狙う。
(※ 2021年レギュラーシーズンの成績。)
【2021年 韓国シリーズ:KTウィズ-トゥサンベアース 日程】
(全試合ソウル・高尺で開催)
第1戦 : 11月14日 14時
第2戦 : 11月15日 18時半
第3戦 : 11月17日 18時半 ※
第4戦 : 11月18日 18時半 ※
第5戦 : 11月20日 14時
第6戦 : 11月21日 14時
第7戦 : 11月22日 18時半
※はトゥサンが後攻。他はKTが後攻。
【韓国シリーズ 展望】
2013年に首都圏の水原(スウォン)を本拠地として球団創設、2015年から一軍に参入したプロ野球10番目の球団・KTウィズはその2年前に参入したNCダイノスが一軍参入2年目の2014年にポストシーズン初出場を果たすなど早くから成果を出したのに対して、思うように実力ある選手たちを集められず苦戦し2017年まで3年連続最下位(プロ野球史上初の10位)だった。しかし2018年に新人王を受賞した主力打者カン・ベッコの活躍から流れが変わり、同年はNCとのし烈な最下位争いを制し9位で終えた。
新球団の特例として2014年と2015年の新人ドラフトで他球団より多く指名された選手たちが主力に成長し既存のチームと互角に戦えるようになり、2019年はNCと最下位争いではなくポストシーズン進出をかけた5位争いを繰り広げ敗れるも過去最高順位の6位だった。そして2020年はついに優勝争いに加わり、レギュラーシーズン2位で6年目にして初のポストシーズン進出を果たすも、経験不足もあってトゥサンとのプレーオフで敗退した。そして2021年はレギュラーシーズン中盤の6月下旬から首位に立ち優勝争いの先頭に立ってきた。しかし終盤に失速、10月23日にはサムソンに押され2位に後退したが、10月28日にサムソンと同率首位に並び、10月30日のレギュラーシーズン最終戦を終えても同率だったため行われた10月31日の1試合だけの1位決定戦でサムソンに勝利し、レギュラーシーズン初優勝と韓国シリーズ初出場を決めた。それから韓国シリーズ第1戦まで2週間ほど日程が開いたため、KTはポストシーズンに出場しなかったハンファなどとの練習試合で実戦感覚を維持し調整してきた。
KTの最大の長所はチーム防御率が10チーム中2位(3.68)の投手陣の中でも特に先発陣にあった。クォリティースタート(先発投手が6回以上自責点3以内)は10チーム中最多の76と、レギュラーシーズン144試合の半分以上を記録していた。その中でも中心的存在は韓国2年目の外国人選手デスパイネでチーム最多の13勝、最多投球回数(188回と3分の2)を記録した。韓国人で最多勝のコ・ヨンピョ(11勝)は10月30日のレギュラーシーズン最終戦同様リリーフに回ることが明らかにされている。それだけ先発陣に余裕がある証拠で、10月31日の1位決定戦で7回無失点と好投し大舞台での勝負強さを見せた韓国3年目の外国人選手クエバス(9勝)が第1戦の予告先発として発表され、他にはペ・ジェソン(9勝)、2020年の新人王ソ・ヒョンジュン(7勝)などが先発投手の候補に挙がる。
先発陣だけでなくリリーフ陣も強固だ。抑えで32セーブを記録したキム・ジェユンが中心的存在で、中継ぎでは27ホールドを記録したチュ・グォン以外にも右のキム・ミンス、パク・シヨン、イ・デウン(元千葉ロッテ)、左のチョ・ヒョヌ、シム・ジェミンと質、量ともにそろっている。ワイルドカード決定戦から勝ち上がり経験豊富で勢いもあるトゥサンの打者たちにとっても攻略は容易でないはずだ。
KTの課題は攻撃力で、チーム打率(.265)は10チーム中4位、総得点(719)は5位と他チームより図抜けた数字とは言えない。レギュラーシーズン終盤は打線の不振で苦戦し優勝争いの稀に見る混戦を招いた。打線の軸はチームの躍進の象徴ともいうべき22歳の左打者カン・ベッコで、打率.347、16本塁打、102打点の成績だった。ただし2020年まで活躍していた外国人選手ロハスのような長打力のある打者が乏しく、2020年までハンファで活躍、シーズン後半からKTに合流した外国人選手ホイングも11本塁打にとどまった。
長打力に乏しい攻撃陣を補ったのが10チーム中2位の盗塁数(110)を記録した走力だ。12本塁打と長打力もあるぺ・ジョンデがチーム最多の19盗塁で、シム・ウジュン(16)、チョ・ヨンホ(12)などカン・ベッコも含めて10盗塁以上の選手がリーグで唯一6名もいて作戦面での多様性を維持していた。上記以外にも捕手のチャン・ソンウ、内野手のファン・ジェギュンとパク・キョンス、40歳の外野手で指名打者のユ・ハンジュンなど経験豊富な打者たちがそろい、KTの初優勝に向けて重要な場面で実力を発揮するはずだ。
ワイルドカード決定戦でキウム、準プレーオフでLG,プレーオフでサムソンをやぶり韓国シリーズに進出したトゥサンは、史上初の韓国シリーズ7年連続出場となる経験値が最大の武器である。レギュラーシーズン終盤に故障し、チーム最多勝(14勝)で最優秀防御率(2.33)、最多奪三振(225)の個人タイトルを受賞した外国人選手ミランダ(元福岡ソフトバンク)はこれまでのポストシーズンを欠場していたが、韓国シリーズから出場することになるも状態は万全ではないようで、第3戦以降の先発予定が明かされている。9勝を記録したロケットは手術を受けたため韓国シリーズでも出場者名簿から外れた。韓国人投手で最多勝(12勝)のチェ・ウォンジュンは準プレーオフ、プレーオフで登板し疲労が蓄積している。そのため韓国シリーズ第1戦はプレーオフで登板しなかった22歳のクァク・ピンが先発するが、KTと比べて先発投手の層の薄さは明白である。リリーフは右のイ・ヨンハ、ホン・ゴンヒィ、キム・ガンニュル、左のイ・ヒョンスンなど経験豊富な選手がそろうが、イ・ヨンハ、ホン・ゴンヒィはプレーオフ以前で3回以上のロングリリーフでの登板があり疲労の蓄積が気がかりだ。
攻撃陣では準プレーオフMVPでポストシーズンに強いチョン・スビン、プレーオフMVPのフェルナンデスが好調で、パク・コヌ、キム・ジェファン、ヤン・ソックァン、ホ・ギョンミン、パク・セヒョク、カン・スンホ、キム・ジェホなど経験豊富な打者たちがそろいKT投手陣を圧迫するには十分である。味方の投手陣に不安があるため、打ち勝つことがワイルドカード決定戦からの初めての韓国シリーズ優勝への近道となる。
韓国シリーズ初出場のイ・ガンチョル監督はトゥサンのキム・テヒョン監督と比べてポストシーズンでの采配の経験に乏しいが、試合の行方を最も左右する投手陣ではKTがかなり優位に立っている。レギュラーシーズンでは4位だったトゥサンは、準プレーオフ、プレーオフと2勝で勝ち上がれる例年と比べ日程が短いポストシーズンの恩恵も受けてきたが、4勝しないと優勝にならない韓国シリーズでは今までのようにいかないことは十分に承知しているはずだ。新興勢力のKTが2020年のNCと同じくレギュラーシーズンに続いて初優勝となるか、トゥサンが地力を発揮してレギュラーシーズン4位からの奇跡的な優勝を果たすか、外の寒気から遮断された室内の高尺スカイドームでの熱戦を期待したい。
(文責:ふるりん)