DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2019 WBSCプレミア12 野球韓国代表 展望

 野球韓国代表にとって、2019 WBSCプレミア12とはどういう位置づけかであるかを述べる。まずは第1回の開催だった2015年大会に続いて2連覇を目標とする大会、次に2020年東京オリンピック野球への出場権を獲得する大会、という2つの目的があげられる。今から11年少々前、野球競技が最後に実施された2008年北京オリンピックで韓国代表は9戦全勝で優勝と快挙を成し遂げ、翌2009年のWBC(ワールドベースボールクラシック)でも準優勝と国際大会でその強さを見せ付け、プロ野球人気が急激に上昇、2010年代には8球団から10球団へとプロ野球界が拡大、そして各地で新球場も完成と、プロ野球界は隆盛を迎えた。

 しかし、野球韓国代表の権威は徐々に低下した。プロ野球シーズンの開幕前に開催されるWBCは有力選手のMLB(メジャーリーグベースボール)への移籍、模が拡大しプロ野球シーズンが長期化したことによる選手たちの意識の変化などもあり、国際舞台で力を発揮できる特別な選手たちが思うように集められなくなり、2013年、2017年ともに1次ラウンドで敗退した。アジア競技大会は2010年、2014年、2018年と3連覇を果たしたが、他の強豪国がプロ選手の精鋭などベストメンバーを送らない大会であるため、プロ野球のレギュラーシーズンを中断してまで選手を派遣する必要があるのか、と疑問視されるようになった。そんな風潮の中、一流プロ選手主体の野球韓国代表が光り輝いたのが、準決勝で日本に逆転勝ちし、決勝でアメリカ合衆国に完封勝利を収め優勝した2015年のWBSCプレミア12であった。

 

 今大会の野球韓国代表には、ハンファをのぞくプロ野球9球団のチームの顔といえる選手たちが勢ぞろいし、若手と経験豊富な選手たちがバランスよく選ばれている。2019年から野球韓国代表を率いることになったキム・ギョンムン監督は、2008年北京オリンピックで指揮した経験があり、トゥサンとNCの監督を長年つとめるなど経験や実績は申し分ない。

 もし2020年東京オリンピックに出場し3位以上となりメダルを授与されると、軍に入隊していない選手は兵役免除の恩典を受けられることになる。これは対象となる選手にとっては最高の動機となるが、すでに過去の国際大会で兵役免除となったり、兵役を終えた選手にとってはオフシーズンに無理してまで出場する必要性を感じられないとも言える。名誉だけでは高年俸の一流プロ選手は動かなくなった。そこでKBO(韓国野球委員会)は2017 WBCの1次ラウンド敗退を受け、国際大会にプロ選手が選ばれた場合、大会の種類や成績に応じてFA(フリーエージェント)の資格取得に必要な日数を付与することにした。たとえばこのWBSCプレミア12では韓国代表に選ばれるだけで10日間、もし優勝すると50日間も付与される。なおオリンピックで優勝すると60日間も付与される。

 幸いこのWBSCプレミア12韓国代表は投打ともに故障者がなく、11月1-2日のプエルトリコ代表との親善試合も2試合連続で完封勝利と調整も順調に見える。開催国・韓国は地の利を生かし、他の3チームよりも有利な立場にある。

 

 オープニングラウンドCの緒戦となるオーストラリア戦(11月6日19時)の予告先発は、韓国屈指の先発左腕ヤン・ヒョンジョンである。オーストラリア代表は2020年東京オリンピック出場権を争う直接の相手であるだけに必勝を期さなければならない。今大会初出場のオーストラリア代表には当初、2019年はハンファで活躍したワーウィック・サーポルド投手が選ばれていたが、2020年シーズンに備えるとの理由で出場を辞退した。とはいえ油断は禁物であり、激戦が予想される。

 11月7日のカナダ戦は同じくプロ野球界を代表する左腕キム・グァンヒョン(SK)の先発が予想される。カナダ代表には2019年SKとロッテに在籍したブロック・ダイクソーン投手がいて、直接対戦するかはわからないが、韓国代表選手の特徴が詳しく伝えられていると思われ、これまた難敵になりそうである。8日のキューバ戦は、中南米勢が苦手としているアンダースローのパク・チョンフン(SK)の先発が予想される。もし幸いにもオーストラリア代表、カナダ代表に連勝していたら、スーパーラウンド進出に向けて弾みをつけたいところである。

 リリーフ陣で重要な役割を担うと思われるのが、近年の国際大会に翌出場してきた左腕チャ・ウチャン(LG)である。ほかのハム・トクチュ(トゥサン)、イ・スンホ(キウム)の左腕がまだ若手であることも大きい。そのほかまだ若いコ・ウソク(LG)、チョ・サンウ(キウム)、イ・ヨンハ(トゥサン)などの快速右腕が三振を奪いピンチをしのぐ場面にも期待したい。

 

 攻撃陣ではイ・ジョンフ(キウム)、パク・ミヌ(NC)といったチャンスメイカータイプと、パク・ピョンホ(キウム)、チェ・ジョン(SK)、キム・ジェファン(トゥサン)と本塁打王の経験がある長打力があり打点をあげるスラッガータイプがはっきりしている。その中間にいるのが盗塁も長打力も多いキム・ハソン(キウム)である。普段高尺スカイドームを本拠地としているキウムの選手たちが主軸を担うことになるのも韓国代表にとっては心強い。

 そして2008年北京オリンピック以降、10年以上も各種の主要な国際大会に出場してきたキム・ヒョンス(LG)は、2015年大会の最優秀選手(MVP)を受賞しているため、2大会連続での活躍が期待されている。ほかにも2019年の首位打者で近年捕手として最強の打撃を誇るヤン・ウィジ(NC)、走攻守そろった大型外野手パク・コヌ(トゥサン)、20歳で今後のプロ野球界を担う大型打者に成長しつつあるカン・ベッコ(KT)など、攻守ともに隙のない現在の韓国プロ野球の最強メンバーが集められている。

 

 2019 WBSCプレミア12の韓国代表には、近年のプロ野球を支えてきた経験豊富な選手が次代を担う若手たちに手本となる姿を見せ新旧の世代の融合で勝利をつかみ、今後の10年につながる栄光への架け橋となってほしい。そして観客動員の伸び悩みなどやや停滞気味のプロ野球界の起爆剤にもなってほしい。戦いの幕は切って落とされようとしている。

 

 

【2019 WBSCプレミア12 韓国代表】
(11月5日時点)

[投手]

パク・チョンフンハ・ジェフンキム・グァンヒョン(以上SK)、イ・ヨンハハム・トクチュイ・ヨンチャン(以上トゥサン)、イ・スンホチョ・サンウ(以上キウム)、ムン・ギョンチャンヤン・ヒョンジョン(以上キア)、コ・ウソクチャ・ウチャン(以上LG)、ウォン・ジョンヒョン(NC)

[捕手]

パク・セヒョク(トゥサン)、ヤン・ウィジ(NC)

一塁手

パク・ピョンホ(キウム)

二塁手

キム・サンス(サムソン)、パク・ミヌ(NC)

三塁手

チェ・ジョン(SK)、ホ・ギョンミン(トゥサン)、ファン・ジェギュン(KT)

[遊撃手]

キム・ハソン(キウム)

[外野手]

パク・コヌキム・ジェファン(以上トゥサン)、イ・ジョンフ(キウム)、ミン・ビョンホン(ロッテ)、キム・ヒョンス(LG)、カン・ベッコ(KT)