DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

プレーオフ:SK-キウム 展望

 2019年のプレーオフは、2年連続で同じ対戦カードとなった。2018年はSKが当時のネクセンヒーローズ(2019年よりキウムヒーローズに改称)を第5戦の延長戦でようやっと倒した激闘で、それに勝った勢いをもってレギュラーシーズン優勝のトゥサンに勝利し、8年ぶり4度目の韓国シリーズ優勝を果たした。

 

 

 2019年レギュラーシーズン、トゥサン、SK、キウムの上位3チームによる優勝争いは9月後半から熾烈を極めるようになった。2位以下に大きな差をつけていたSKが9月以降連敗を重ねて失速し、結局最後は88勝55敗1分でトゥサンと同率に並ばれ、さらに直接対決で負け越していたため優勝をトゥサンに奪われてしまった。その下降線をたどっていたチーム状態のままプレーオフに望んでしまうと、韓国シリーズ2連覇は厳しくなる。

 SKの攻撃陣といえば、前任のトレイ・ヒルマン監督の時期では狭い本拠地球場の特性を生かした本塁打攻勢が特徴的で、2年前の2017年はチーム本塁打数(234)のプロ野球記録を更新するほどだった。チーム本塁打数は2018年も233と10球団中1位だったが、2019年は2年前の117と半減し3位となってしまった(ともにシーズン144試合)。その理由のひとつに2019年シーズンより導入された低反発球があげられるだろう。主力選手の本塁打数の推移を見てみる。

 

ロマック:2018年 43本→2019年 29本

チェ・ジョン:2018年 35本→2019年 29本

ハン・ドンミン:2018年 41本→2019年 12本

イ・ジェウォン:2018年 17本→2019年 12本

キム・ガンミン:2018年 14本→2019年 8本

 

 プロ野球全体の本塁打数が減少した中、ロマック(元横浜DeNA)、チェ・ジョンは2019年もリーグ上位の本塁打数を残したが、2018年韓国シリーズMVP(最優秀選手)を受賞したハン・ドンミンは半分以下になってしまい、必然的にチームカラーの変化を招いた。2018年に27本塁打を記録した右の長距離砲キム・ドンヨプをトレードに出して獲得したコ・ジョンウクは外野のレギュラーとして活躍し、31盗塁とチームの機動力を高め、SKのチームカラーを変えたともいえる。またノ・スグァンの27盗塁、キム・ガンミンの15盗塁と、SKのチーム盗塁数118は10球団中1位であり、機動力野球へとシフトチェンジしたといえる。チーム打率.262は10球団中4位、総得点は655と同じく4位と、攻撃力は中位のチームだった。

 また控えの野手の層が厚くはなく、9月以降の失速を招く原因ともなった。しかしレギュラーシーズンでほとんど出番がなかったが、過去のポストシーズンでの経験を買われて2018年と同様の活躍が期待される38歳のベテラン打者パク・チョングォンがここ一番の勝負どころで代打として起用され、流れを変えるかもしれない。

 

 SKが優勝争いを続けた原動力は、チーム防御率3.48は10球団中1位、失点546は同最下位を記録した投手陣であった。先発投手陣の防御率3.39は1位で、韓国人エースのキム・グァンヒョンと韓国2年目の外国人選手サンチェスがともに17勝とチーム最多勝だった。ポストシーズンでもこの2人が先発の軸として機能すると思われる。そのほかにもムン・スンウォン(11勝)、6月に韓国へ復帰した経験豊富な外国人選手ソーサ(9勝)、アンダースローのパク・チョンフン(8勝)と先発投手陣は頭数がそろっていた。

 リリーフ陣の防御率3.69は10球団中3位と、キウム、トゥサンと比べやや成績が悪かった。2018年まで抑えが固定できなかったが、国外の複数のプロ野球を経験し2019年に新人ドラフト指名でSKへ入団したハ・ジェフン(元東京ヤクルト)がリーグ最多の36セーブと予想以上の活躍を見せた。中継ぎではリーグ最多登板(72試合)の右腕ソ・ジニョンが33ホールド、左腕キム・テフンが27ホールドと柱となっていて、ほかにもパク・ミンホ、チョン・ヨンイルなどが盛んに起用されたが、チームが失速した9月以降は不調の選手が目立っていた。

 

 

 対するキウムはLGとの準プレーオフを4試合で終え、中3日の休養をもってSKとのプレーオフに臨む。

 先発投手陣はブリガム(元東北楽天)、ヨキシュの外国人選手2名にチェ・ウォンテ、イ・スンホの若手2名の韓国人選手が起用されるであろうが、LGとの準プレーオフでは22歳のチェ・ウォンテ、20歳のイ・スンホが経験不足で役割を果たせなかった。そのため準プレーオフではレギュラーシーズン以上の細かい継投となった。勝利した第2戦では延長戦10回で9名、敗れた第3戦では6名、勝利した第4戦では9回で10名の投手が登板した。これはキウムのリリーフ陣の防御率3,39が10球団中1位という質の高さにもよるところがある。先発陣の防御率3.74は10球団中3位でSKと比べ分が悪いだけに、プレーオフでもリリーフの起用が重要となる。リリーフ陣のうち準プレーオフでは特にチョ・サンウが好調で、プレーオフでも期待がかかる。

 キウムの攻撃陣では、やはり4番打者パク・ピョンホが準プレーオフで3本塁打6打点の成績でMVPを受賞し、2019年本塁打王(33本)の実力を見せつけた。イ・ジョンフ、キム・ハソン、ソ・ゴンチャンなどの主力打者は活躍したが、第3戦まで見せ場のなかった2019年打点王(113点)がようやく第4戦で決勝タイムリーを打った。また代打で強打の捕手パク・トンウォンを起用できるなど、選手層はSKと比べて厚い。

 

 

 準プレーオフの勢いをある程度持ち込めるキウムと違って、レギュラーシーズン最終戦があった9月30日以降2週間ぶりの公式試合となるSKは実戦の感覚を回復させるのに時間を要する可能性がある。また最後の最後でレギュラーシーズン優勝と韓国シリーズ進出を逃した精神的ショックから立ち直っているかもわからない。そう考えるとキウムが有利であるかに思えるが、試合を作る先発投手陣の質はSKのほうが上で、リリーフ陣がよいとはいえ消耗品でもあるため準プレーオフからの疲労が出てしまうこともある。レギュラーシーズンでは144試合で2ゲーム差しかなかった両チームの対戦は、第5戦の延長10回裏にハン・ドンミン(SK)の逆転サヨナラ本塁打で決着がついた2018年の激闘の再来を期待する。

 なお、2019年シーズンよりSKを率いるヨム・ギョンヨプ監督は、2013年から2016年までネクセンの監督だったため、当時はフロントの職員だったキウムのチャン・ジョンソク監督とは旧知の間柄である。両監督の采配での対決にも注目したい。

 

(文責:ふるりん