DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2018年シーズン回顧 第8回 LGツインス

次のチームの軸は誰に

2018年シーズン成績

レギュラーシーズン:68勝75敗1分(勝率.476)8位

ポストシーズン:出場せず

 

f:id:takefumif:20180331192609j:plain

2002年のプロ入り以降、17年にわたりLGツインスの顔であり続けるパク・ヨンテク。

 

1.まさかの大失速

 LGツインスは2017年、レギュラーシーズン6位に終わり2年連続のポストシーズン進出を逃した。オフシーズンに最も話題を呼んだのは、同じ蚕室(チャムシル)野球場を本拠地とするライバルのトゥサンの主力打者として活躍し、2016年よりMLB(メジャーリーグベースボール)へ移籍したキム・ヒョンスと4年契約を結んだことだった。韓国屈指の好打者の加入で、チームにはようやく真の4番打者がやって来たと喜ぶファンも多かったことだろう。

 キム・ヒョンスは期待通り4番打者として活躍し、4月28日までのシーズン最多の8連勝で首位を独走していたトゥサンやSKとの上位争いに加わった。だがその後5月8日まで8連敗で勝率が5割を切ってしまい、しばらくは停滞が続いた。5月24日のNC戦までの4連勝でまた勝率5割を超え上位に近づいた。

 6月3日のネクセン戦で外国人選手ウィルソンが韓国では初の完封勝利を飾り6連勝となり、5日のハンファ戦では7連勝となった。さらにウィルソンは6月9日のサムソン戦でも7回無失点と好投し勝利に貢献、LGはハンファを抜いて3位に浮上した。その後4連敗で4位に後退したが、6月19日のハンファ戦ではチャ・ウチャンの好投で完封勝利をおさめ、4連勝で2位に浮上した。

 そしてこの2位に浮上した時点でレギュラーシーズンの半数以上の73試合で41勝32敗、勝率は.562ながらも、当時の勝率が.681と圧倒的な強さを誇っていた首位トゥサンとは8ゲームもの差がついていた。振り返ってみるとこの時が2018年シーズンのピークで、実は日程の関係でトゥサンとはたった5試合(5敗)しか対戦していないという幸運にも支えられていた。

 6月20日には1日で3位に後退し、その後順位が上がることはなかった。6月23日、蚕室でのロッテ戦で、39歳のベテラン打者パク・ヨンテクが4回裏にタイムリーヒットを打ち、プロ野球個人通算2319安打の新記録を達成した(2018年シーズンまでに2384安打を記録中)。6月29日に4位に後退したが、この時点ではまだ勝率5割弱の5位キアと5ゲーム差があった。

 7月前半は何とか4位にとどまり、7月17日から19日のネクセン3連戦で3連勝し、シーズン終盤のポストシーズン進出争いへ向けて上昇気流に乗りたかった。だが5月6日以来2ヶ月以上対戦のなかったトゥサンとの3連戦で3連敗し、ここから転落が始まった。初の2ケタ勝利に達したイム・チャンギュ、チャ・ウチャンなどの先発陣が不調に陥ったのである。

 7月31日のトゥサン戦から8月9日のサムソン戦までシーズン最多の8連敗を喫し、勝率5割を切りネクセンに抜かれ5位に後退した。こうしてLGはサムソン、ロッテ、キアとのポストシーズン進出をかけた5位争いに巻き込まれ、8月17日からのジャカルタパレンバンアジア競技大会による中断期間を迎えた。アジア競技大会ではショートのオ・ジファンが28歳にしてようやく韓国代表として出場し、3連覇により兵役免除の恩典を受けることができた。

 レギュラーシーズンが再開された9月4日、KT戦でキム・ヒョンスが負傷して戦線を離脱してしまい、暗雲が垂れ込めた。だがLGはこの後調子を取り戻し、9月13日のサムソン戦ではパク・ヨンテクの満塁本塁打などで勝利し勝率5割に復帰、4位ネクセンに1ゲーム差と近づいた。だが勝率5割を超えることはできず、9月22日までトゥサン戦を含め6連敗で6位に後退した。

 9月28日のキア戦ではかつて先発に抑えに活躍した左腕ポン・ジュングンの引退セレモニーが開かれたが、勝利で飾ることはできなかった。9月30日、すでにレギュラーシーズン優勝を決めていたトゥサンとの直接対決での連敗が15にまで伸びてしまい、8位にまで後退した。キム・ヒョンスの離脱の影響は小さくなかった。

 10月2日のKT戦で3連敗から脱出したが、レギュラーシーズンは残り3試合しかなく厳しい状況となった。10月6日、チャ・ウチャンが1失点で完投しようやく16試合目にして対トゥサン戦初勝利をあげたが、残り1試合では時すでに遅し。

 10月13日、レギュラーシーズン最終戦となったSK戦ではキム・ヨンジュン、ソン・ドンヒョンと19歳の高卒新人のリリーフが8回裏に追加点を与えなかったことで9回表に逆転、最後は守護神チョン・チャンホンが抑え、2018年シーズンを勝利で締めくくった。8位で2年連続ポストシーズン進出は失敗に終わったものの、今後に向けて希望を感じさせたが、5位キアとは最終的に1.5ゲーム差しかなかったため、トゥサンとの直接対決で1勝15敗と記録的な大敗を喫したことが心から悔やまれる。

 

2.チーム分析

 チーム防御率5.32はリーグ6位で、先発のチーム防御率5.14はリーグ4位と悪くはなかった。

 先発投手陣は左腕チャ・ウチャンがチーム最多の12勝で、右腕イム・チャンギュが25歳を目前に自身最多の11勝と成長を見せたものの、この2人は好不調の波が激しくシーズンを通した防御率が5点以上と高かった。一方で韓国1年目の外国人選手ウィルソンは9勝にとどまったが防御率3.07と安定した内容だった。韓国6年目の外国人選手ソーサも9勝だったが、後半勝てなくなり評価を落とした。

 この4人に次ぐ5人目の先発を確立できなかった点が上位に進出できなかった要因のひとつとなった。期待された21歳の右腕キム・デヒョンは2勝10敗、防御率は7点台と明らかに伸び悩んだ。若手では19歳の高卒新人キム・ヨンジュンが一軍で14試合に登板、うち2試合に先発し2勝を記録し貴重な経験を積んだ。

 リリーフのチーム防御率5.62はリーグ9位で先発の足を引っ張っていた。抑えのチョン・チャンホンは27セーブを記録したが防御率は4.85と高く、チームのホールド数43はキアと並んでリーグ最下位と中継ぎが踏ん張れない展開の試合が多かった。チョン・チャンホンと並びチーム最多登板(66試合)の左の中継ぎチン・ヘスは14ホールドも防御率7.21だった。右の中継ぎでは20歳の若手コ・ウソクが56試合に登板したが、防御率は5.91とまだまだ改善の余地がある。その他シン・ジョンナク、キム・ジヨンなどが起用されたが層が薄く、特定の投手の起用がさらなるリリーフの質の低下を招いた。

 

 攻撃力であるが、チーム打率.293は3位もチーム本塁打数148は8位でチーム総得点788はリーグ6位と、広い蚕室野球場を本拠地にしていることもあり打線の長打力不足が感じられた。

 4番打者として期待されたキム・ヒョンスは9月上旬からのシーズン終了までの戦線離脱が響き117試合の出場にとどまったが、打率.362で首位打者の個人タイトルを受賞し、20本塁打・101打点と高い実力を証明した。チームの主軸に成長したのは28歳のチェ・ウンソンで、チーム最多の25本塁打・119打点と活躍した。また内野の主力に成長したヤン・ソックァンは22本塁打・82打点、強打の捕手ユ・ガンナムは19本塁打・66打点、39歳のベテラン打者パク・ヨンテクは15本塁打・76打点、唯一レギュラーシーズン全144試合に出場したショートのオ・ジファンは11本塁打・71打点と、それぞれ持ち味を発揮した。ただ外国人選手のガルシアは故障で50試合のみの出場にとどまったが、出場すれば結果を残した(打率.339・8本塁打)だけに惜しまれる。

 なおチーム盗塁数71はリーグ9位と機動力不足が目立ったが、二塁のレギュラーに定着したチョン・ジュヒョンが自身最多の115試合に出場し、チーム最多の18盗塁を記録した。その他左の外野手イ・チョヌンが自身最多の112試合に出場するなど、20代後半の選手がチームの軸に成長し、リュ・ジュンイル監督の下で世代交代には成功した。

 

3.オフシーズンの動向

 FAとなった39歳のパク・ヨンテクは2年契約で再契約し、2019年以降も個人通算最多安打記録(2384本)を更新し続けるであろう大打者はLGで現役を終える可能性が高くなった。またリュ・ジュンイル監督はチャン・ウォンサム、シム・スチャンなど他球団を自由契約となった経験豊富なベテラン選手たちと複数契約したが、これは若返りの方針が目立つプロ野球の全体的な風潮に反しているともいえる。またトレードでない外野のユーティリティープレイヤーのムン・ソンジェの代わりに、キアで伸び悩んでいた左腕チョン・ヨンウンを獲得した。

 外国人選手は29歳と比較的若いウィルソンとは再契約したが、33歳と年齢が高くなっていたソーサ、故障が多かったガルシアとは再契約せず、新外国人選手としてケーシー・ケリー投手、トミー・ジョセフ内野手の2名と契約した。主軸打者のヤン・ソックァンが軍隊へ入隊し不在となったため、右の大砲として2016年、2017年とフィラデルフィアフィリーズで2年合計43本塁打を記録したトミー・ジョセフにかかる期待は大きい。

 

 かつてサムソンで韓国シリーズ4連覇を達成したリュ・ジュンイル監督は、LGで指揮を執り2年連続でポストシーズン進出を逃した。就任3年目となる2019年はチームにとっても監督自身にとっても勝負の年となる。パク・ヨンテクが遠からず引退すると思われる中、誰が次のLGツインスの軸となり1994年以来となる韓国シリーズ優勝に導くのかに注目したい。

 

(文責:ふるりん)