DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2018年シーズン回顧 第7回 ロッテジャイアンツ

熱狂に応えることの難しさ

2018年シーズン成績

レギュラーシーズン:68勝74敗2分(勝率.479)7位

ポストシーズン:出場せず

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ロッテの本拠地・社稷(サジク)野球場

 

1.好不調の波激しく

 ロッテジャイアンツのファンは韓国でも有数の熱狂度で知られている。これは大都市の釜山(プサン)、近隣の蔚山(ウルサン)や慶尚南道キョンサンナムド)の野球ファンの期待を一心に受けてきたこともあるが、1982年のプロ野球発足後2度しか韓国シリーズで優勝していない(1984年と1992年)せいもあるだろう。そしてレギュラーシーズン優勝は1度もない。応援するチームには何よりも勝利を求めるため、シーズン後半の夏場から下位に低迷してしまうとあっという間にファンは応援に来なくなり、春先の熱狂が嘘のように静かとなる。

 2017年はレギュラーシーズン3位で5年ぶりにポストシーズンへ進出したが、準プレーオフでNCダイノスに敗れた。オフシーズンにはFA(フリーエージェント)となっていたミン・ビョンホンがトゥサンから、チェ・テインがネクセンからトレードで移籍し補強を図るも、10年以上正捕手の座にあり2度目のFAとなっていたカン・ミンホがサムソンへ移籍し、先発として計算が立つ外国人投手リンドブロムもトゥサンへ移籍するなど、予想だにしなかった大きな戦力の流出があった。こうした中、2018年は就任から3年目を迎えたチョ・ウォヌ監督は開幕前から大きな難題を抱えていた。

 ほかにも先発投手陣の一角を担うと思われていたパク・セウンの故障による不在などの不安は的中し、レギュラーシーズン開幕の3月24日から3月31日まで7連敗と最悪のスタートを切ってしまった。4月1日のNC戦でようやく初勝利をあげ、4月半ばから上昇気流に乗り4月25日のKT戦で最下位から脱出した。

  5月17日には5連勝で勝率が5割を声、順位も4位にまで上げた。だが好不調の波が激しく、5月26日までの6連敗で8位にまで後退し、その後シーズン終了まで勝率5割を超えることはなかった。さらに6月2日までの5連敗で9位に後退した。イ・デホ(元福岡ソフトバンク)、ソン・アソプ、チョン・ジュヌなどの主力打者は健在も、34歳のベテラン右腕ノ・ギョンウンの復活はあったが開幕前から不安視されていた先発投手陣の層の薄さ、そしてカン・ミンホに代わる捕手の不在が大きく響いていたようだった。

 6月20日までの5連勝で7位にまで順位を戻すが、レギュラーシーズンの半ばに差し掛かり上位との差はだいぶ開いていた。デュブロント、バーンズの外国人選手たちが調子を上げてきたが、6月下旬からチームが下降線をたどりだした。折り返し地点を過ぎた7月21日までの4連敗でまたも8位に後退し、2年連続のポストシーズン進出は厳しくなってきたかに思えた。

 8月は勝率4割半ばを維持し、勝率5割未満のポストシーズン進出をかけた5位争いには何とか踏みとどまった。8月16日のキア戦で3連勝となり7位に浮上したが、ジャカルタパレンバンアジア競技大会による中断期間からレギュラーシーズンが再開された9月4日のハンファ戦で敗れ、すぐに8位に後退した。そして9月16日までのシーズン最悪の8連敗により、依然8位ながら7位サムソンとは4ゲーム差、そして5位のLGとは7ゲーム差と残り試合23試合の状況でかなり厳しい状況に追い込まれた。8連敗中の9月12日には8月以降不振に陥り改善の見込みがないと思われた外国人選手デュブロントを退団させ、チームに危機感を持たせようとしていた。

 すると9月22日のサムソンまで4連勝と息を吹き返し、9月30日には7位に浮上して5位キアとは3.5ゲーム差と、残り12試合ながらポストシーズン進出への可能性が少し見えてきた。10月7日のNC戦で勝利し6位に浮上、5位キアとは1ゲーム差に迫り、残り7試合のうちキア戦が4試合もあったためファンたちも期待を抱き始めた。

 10月9日、キアとの重要な一戦でロッテの本拠地・社稷(サジク)野球場は2万5000人の満員の観衆で埋まった。試合はキアが3回表に8点を奪い逆転するも、ロッテが3回裏に4点を返し6回裏に8-8の同点に追いつくなど、決戦というにふさわしい展開となった。キアは8回表に1点を勝ち越したが、ロッテは9回裏にムン・ギュヒョンの犠牲フライで9-9の同点に追いつき、試合は延長にもつれこんだ。10回表に守護神ソン・スンナクが1点を勝ち越されるも、ロッテは10回裏に同点に追いつくと、11回裏にムン・ギュヒョンのタイムリーで11-10とサヨナラ勝ちし4連勝、ついに5位キアとゲーム差なしで並び社稷野球場は2018年では最高の興奮と熱狂に包まれていた。

 しかし長時間の激闘による勝利の犠牲は余りにも大きく、翌10月10日のKTとのダブルヘッダー2連戦で連敗してしまい、キアとの残り3試合すべてに勝利するしかなくなった。11日のキア戦は復活を遂げた34歳のノ・ギョンウンの好投で完封勝利しキアと0.5ゲーム差に迫ったが、翌12日のキア戦で敗れ7位に後退、そしてキアの5位が確定し2年連続のポストシーズン進出に失敗した。そして10月14日、すっかり熱気の冷めた社稷野球場でのレギュラーシーズン最終戦のトゥサン戦に勝てば6位だったが敗れてしまい、7位のままで2018年シーズンのロッテの戦いは終わりを告げた。

 

 

2.チーム分析

 チーム防御率5.41はリーグ8位で、投手陣、特に先発陣の弱さがポストシーズン進出に失敗した大きな要因だった。

 先発のチーム防御率5.67はリーグ9位で、最下位のキア(5.68)と大差なかった。チーム最多勝は外国人左腕ラリーの11勝だったが、もう1人の外国人左腕デュブロントが6勝止まり、さらに9月で退団と期待を裏切ってしまった。韓国人では34歳のノ・ギョンウンが近年の不振から脱し9勝と最多だった。また25歳のキム・ウォンジュンが自身初の規定投球回数(144)に達し8勝と成長を見せた。だが2017年に12勝を記録した22歳のパク・セウンが故障で1勝止まりだったのが余りにも痛かった。

 リリーフのチーム防御率5.05はリーグ3位と比較的機能していた。36歳の守護神ソン・スンナクは28セーブと安定した働きを見せた。72試合とチーム最多登板のオ・ヒョンテクは、2017年シーズンオフに2次ドラフトでトゥサンから移籍してきた新天地で見事な復活をとげ、25ホールドで最多ホールドの個人タイトルを受賞した。また64試合に登板した右腕ク・スンミンは7勝14ホールド、60試合に登板したチン・ミョンホは5勝9ホールドと中継ぎ陣が自身の役割を果たした。左のワンポイントではイ・ミョンウ、コ・ヒョジュンが主に起用された。

 

 攻撃力に関してはチーム総得点821はリーグ5位、チーム打率.289はリーグ4位、チーム本塁打数203は3位だった。

 打線の軸となったのは36歳の4番打者イ・デホで、レギュラーシーズン全144試合に出場、チーム最多の37本塁打・125打点と換えの利かない存在だった。またチョン・ジュヌが32歳にして初めて144試合に出場、自身最多の33本塁打・90打点を記録、最多安打(190本)の個人タイトルを受賞した。この2人とともに主軸を打ったソン・アソプも26本塁打・93打点、チーム最多の20盗塁を記録した。

 韓国2年目の外国人選手バーンズが23本塁打、FAでトゥサンから移籍したミン・ビョンホンが17本塁打、ネクセンからトレードで移籍したチェ・テインが15本塁打、三塁のレギュラーのシン・ボンギが11本塁打、LGから2次ドラフトで移籍したイ・ビョンギュが10本塁打と、2ケタ本塁打を記録した選手が8人もいて打線に切れ目がなかったかのようである。だがチーム盗塁数68はリーグ最下位で、ソン・アソプ以外に2ケタ盗塁を記録したのが代走や守備固め中心のナ・ギョンミン(12盗塁)だけだった。

  カン・ミンホの去った正捕手の座は結局埋まらなかった。20歳の若手ナ・ジョンドクがチーム最多の106試合に出場したが、特に打撃面では一軍の主力としての水準に達していなかった。そのため23歳の若手アン・ジュンヨルが7月以降に出場機会を増やし今後に可能性を感じさせた。ほかの若手野手では19歳の高卒新人の内野手ハン・ドンヒィが87試合に出場、4本塁打・25打点と一軍で結果を残した。

 またロッテはリーグ最多の117失策と守備面でも不安を抱えていた。特にバーンズの守る二塁、ムン・ギュヒョンの守るショートと二遊間での失策が目立ち投手陣の足を引っ張った。

 

 

3.オフシーズンの動向

 2018年シーズン終了後、チョ・ウォヌ監督が更迭され、2004年から2005年まで指揮していたヤン・サンムンが13年ぶりにロッテの監督に就任した。2017年まではLGの監督で、2018年は団長を務めるなど現場もフロント業務も知る指導者にチームの再建を託した形となる。

 FAとなったノ・ギョンウン、イ・ミョンウともに再契約を結ばなかった。特に先発で活躍したノ・ギョンウンは再契約の交渉がこじれたためロッテは交渉を打ち切った(2名とも2月8日時点でどの球団とも契約せず)。30代半ばのベテラン選手を見切り、ユン・ソンビンなど若手投手の育成に重点をおくためだと思われる。

 外国人選手では2017年より失策数が大幅に増加したバーンズと再契約を見送り、新外国人選手としてカルロス・アスアヘ内野手、ジェイク・トンプソン投手の2名と契約した。また2015年から契約している左腕ラリーとは2019年も再契約し、ロッテで5年目のシーズンを迎えることになった。

 

 大勢の熱狂的なファンが背後についているロッテジャイアンツは、結果を出せなくなるとすぐに監督を換えてしまい、1982年の球団創設以降4年以上指揮を執った監督がいない。これでは長期的なチーム作りはできず、さりとて幸運にも1年限定の強さで優勝することもない。果たして社稷野球場が優勝の歓喜で満ち溢れるのはいつの日のことになるだろうか。

 

(文責:ふるりん