DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2018年シーズン回顧 第4回 ネクセンヒーローズ

目覚しい若手の躍動

2018年シーズン成績

レギュラーシーズン:75勝69敗(勝率.521)4位

ポストシーズンワイルドカード決定戦(対キア)勝利→準プレーオフ(対ハンファ)3勝1敗 勝利→プレーオフ(対SK) 2勝3敗 敗退

 

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2008年のヒーローズ創設時から応援を盛り上げているマスコットのトクトリ(写真中央)

 

1.2年ぶりのポストシーズン進出、プレーオフでの激闘

 2008年、経営危機に陥った現代ユニコーンスの解散に伴いその空白を埋めるために創設されたウリヒーローズ。既存のプロ野球チームと違い、大企業を経営母体に持たずスポンサーを募って運営費をまかなう形式は斬新ゆえに不安視された。案の定というか、最初のメインスポンサーだったウリタバコは2008年シーズン途中で撤退してしまい、2010年シーズン開幕前にネクセンタイヤがメインスポンサーとなるまでヒーローズは財政的に苦しく主力選手をトレードして費用を捻出していた。

 だが、球団創設のころから韓国におけるプロ野球人気は上昇し、観客動員は大幅に増加したことで広告料などの収入が増え、徐々に経営は安定した。そして2016年からは韓国初のドーム型野球場・高尺(コチョク)スカイドームに本拠地を移し、2018年は球団創設から10年と節目の年だった。2017年より指揮を執るチャン・ジョンソク監督は、7位に終わり5年ぶりにポストシーズン進出を逃した前年からの巻き返しを図るシーズンであった。

 2017年シーズンオフ、2016年よりMLB(メジャーリーグベースボール)・ミネソタツインズに移籍した主砲パク・ピョンホが復帰し打線に軸ができた。だがパク・ピョンホ、ソ・ゴンチャンの主力打者2人ががレギュラーシーズン開幕後の4月、相次いで負傷により戦線から離脱した。パク・ピョンホは5月に復帰したが思うようにチームは勝てず、勝率5割前後で中位をさまよっていた。5月22日、抑えとして起用されていたチョ・サンウと捕手パク・トンウォンが遠征中に無断で宿舎を抜け一般女性に暴行した嫌疑をかけられ資格活動停止処分となり、戦力的に大きな打撃を受けた。

 6月21日には試合中に負傷した外国人投手ロジャースの代役として、2017年までNCで活躍した外国人投手ハッカーと契約した。7月下旬には6位に後退し上位との差が開いてきたが、8月7日に主軸打者としては物足りない成績だったチョイスを退団させ、代役の新外国人選手としてサンズと契約した。そしてこのころから2018年より一軍に定着したキム・ヘェソン、ソン・ソンムン、キム・ギュミン、イム・ビョンウクなど若手野手が自信をつけチームの調子が上向き、8月15日までの11連勝で4位に浮上し、上位との差を大きく縮めた。

 8月17日からプロ野球のレギュラーシーズンは中断され、8月26日からのジャカルタパレンバンアジア競技大会野球韓国代表にネクセンからは主砲のパク・ピョンホ、そして若手のキム・ハソン、イ・ジョンフ、チェ・ウォンテが選ばれ出場した。パク・ピョンホは決勝まで4試合連続本塁打、イ・ジョンフは直前の好調を維持しヒットを積み重ねるなど韓国代表の3連覇に貢献し、キム・ハソン、イ・ジョンフ、チェ・ウォンテは兵役免除の恩典を受けた。しかし8月までにチーム最多の13勝を記録したチェ・ウォンテが大会中に登板した際の肩の故障で、レギュラーシーズンが再開された9月4日以降の試合に登板できなくなりやや暗雲が立ち込めた。

 9月以降はハンファとの3位争いとなり、チェ・ウォンテの穴は19歳の若手イ・スンホなどの若手の起用で埋め大きな戦力ダウンとはならなかった。ドーム型野球場の高尺スカイドームを本拠地としているため10月以降の終盤は試合数が少なく、ハンファが調子を落としたため10月13日のレギュラーシーズン最終戦まで決着がつかなかった。結局ネクセンはサムソンに敗れ4位が確定し、2016年以来2年ぶりに出場を決めたポストシーズンワイルドカード決定戦からの出場となった。

 10月16日のキアとのワイルドカード決定戦は7回表にイ・ジョンフが好守備で勝ち越しを防ぐと、7回裏にイ・ジョンフのヒットからチャンスをつくりこの回4点を勝ち越し、10-6で勝利し準プレーオフへの進出を決めた。10月19日からのハンファとの準プレーオフは、敵地・大田(テジョン)での第1戦でパク・ピョンホの本塁打と先発ハッカーの好投で3-2と勝利すると、続く第2戦もイム・ビョンウクの2打席連続本塁打などで6-4と勝利し有利に進めた。本拠地・高尺での第3戦は3-4と敗れたが、第4戦はポストシーズン初出場で経験の浅いイ・スンホを先発させ先制を許したが、4回裏にキム・ギュミンのタイムリーで逆転すると、19歳の高卒新人アン・ウジンが第2戦に続いてロングリリーフで好投し、5-2と勝利し3勝1敗でプレーオフ進出を決めたが、イ・ジョンフを試合中の負傷で欠くこととなった。

 10月27日からのプレーオフはレギュラーシーズン2位のSKが有利と見られていたが、予想以上の激戦となった。敵地・仁川(インチョン)での第1戦は抑えのキム・サンスが9回裏にサヨナラ本塁打を浴び8-10で敗れると、第2戦は打線が不発で1-5と敗れ、もう後がなくなってしまった。だが本拠地・高尺に戻った第3戦は先発ハン・ヒョンヒィやイ・ボグン、キム・サンスなどリリーフ陣の好投で3-2と勝利すると、第4戦はサンズの本塁打、準プレーオフに続くアン・ウジンのリリーフでの好投で4-2と勝利し、決着は第5戦に持ち越された。

 11月2日、敵地・仁川での第5戦は8回裏までに4-9と5点差をつけられていた。しかし最後かと思われた9回表、ソン・ソンムンのタイムリーなどで3点を返すと4番パク・ピョンホの本塁打で9-9の同点に追いつき、試合は延長にもつれ込んだ。そして延長10回表、ネクセンはキム・ミンソンのタイムリーで1点を勝ち越し、4年ぶりの韓国シリーズ進出に大きく近づいた。しかし信頼できるリリーフを9回裏までに使ってしまっていたこともあり、10回裏にシン・ジェヨンが2者連続本塁打を喫して10-11と敗れてしまい、ネクセンヒーローズとしての戦いはここで幕を下ろした。

 

2.チーム分析

 チーム防御率5.08はリーグ4位で、先発のチーム防御率4.73はリーグ2位だった。

 チーム最多勝(13勝)は21歳のチェ・ウォンテで、アジア競技大会の負傷で9月以降の登板がなかったのが惜しまれるが、2017年の11勝に続いて2年連続2ケタ勝利と若きエースに成長した。韓国2年目の外国人選手ブリガム(元東北楽天)はリーグ最多の199回に登板し2年連続の2ケタ勝利となる11勝を記録し、先発陣の柱であった。6月に退団したロジャース、その後途中入団したハッカーはそれぞれ5勝を記録した。またハン・ヒョンヒィが2015年以来の2ケタ勝利となる11勝で復活を遂げ、シン・ジェヨンも主に先発で8勝を記録した。

 比較的充実していた先発陣と比べ、リリーフの防御率5.67はリーグ最下位と足を引っ張った。だが72ホールドはリーグ1位と試合を壊さないタイプの投手が多かったといえる。リリーフの中心はリーグ2位の24ホールドを記録しチーム最多登板(64試合)のイ・ボグン、シーズン途中から抑えを負かされたキム・サンス(18セーブ)だった。左の中継ぎとしてはオ・ジュウォン、キム・ソンミンなどが起用された。またレギュラーシーズンではあまり結果を残せなかったが、準プレーオフプレーオフポストシーズンで合計6試合に登板し3勝を記録した高卒新人アン・ウジンは今後に可能性を感じさせた。

 攻撃力についてはチーム総得点825はリーグ4位、チーム打率.288はリーグ5位、チーム本塁打数165はリーグ6位と中位の数字が並ぶ。

 4月から5月にかけ負傷で離脱したため113試合の出場にとどまったが、主砲パク・ピョンホはチーム最多の43本塁打・112打点を記録し打線の軸となった。また2017年の新人王イ・ジョンフは同じく負傷で109試合の出場にとどまったが、リーグ3位(規定打席到達者)の打率.355と打撃技術に進化を見せた。

 20歳のイ・ジョンフに続く若手野手の台頭も目覚しく、19歳の若手内野手キム・ヘェソンはプロ2年目にしてチーム最多の136試合に出場、31盗塁を記録するなど主力に成長した。これに刺激を受けて23歳のイム・ビョンウクが外野のレギュラーに定着し134試合に出場、25歳の外野手キム・ギュミンも一軍で106試合に出場した。22歳の内野手ソン・ソンムンも8月以降に出場機会を増やし78試合に出場、準プレーオフなどポストシーズンでも活躍した。また捕手ではパク・トンウォンの代わりに25歳のキム・ジェヒョンがチーム最多の116試合に出場した。こうしてチームの新陳代謝が進む中、2016年からショートのレギュラーとして活躍する23歳のキム・ハソンも、3年連続20本塁打と安定した成績を残した。

 外国人選手では、2017年シーズン途中から契約していたチョイスが17本塁打・61打点を記録するも打率が.258と低く信頼を得られず8月に退団となり、代役となったサンズは25試合のみの出場も12本塁打・37打点と結果を残し、ポストシーズンプレーオフでも2本塁打・6打点と活躍した。

 

3.2019年シーズンに向けて

 2018年シーズン終了後、3年の契約期間が切れたネクセンタイヤとメインスポンサー契約を更新せず、新たなメインスポンサーとしてキウム証券と2023年までの5年契約(毎年100億ウォンのスポンサー料)を結び、2019年よりチーム名を「キウムヒーローズ」に変更した。キウム証券は2018年以前から高尺スカイドームなどプロ野球の本拠地球場に広告を出すなどかかわりを持っていた。

 オフシーズンで話題となったのはSK、サムソンとの三角トレードである。パク・トンウォンの不祥事、キム・ジェヒョンの軍への入隊により経験豊富な捕手が不在となったため、若手の台頭で出場機会が減った俊足の外野手コ・ジョンウクがSKへ、外野手キム・ドンヨプがSKからサムソンへ、そしてサムソンから一時期正捕手だったイ・ジヨンがネクセンへ移籍しそれぞれの弱点を補い合った。FA(フリーエージェント)となった選手については、中継ぎの柱イ・ボグンは3年契約(1年延長あり)で再契約したものの、5年以上三塁のレギュラーとして活躍してきたキム・ミンソンは2月5日時点でキウムを含めたどの球団とも未契約である。

 外国人選手についてはブリガム、サンズと再契約し、35歳と年齢が高いハッカーとは再契約せず、新外国人選手として左腕エリック・ヨキシュ投手と契約した。

 

 球団創設から10年が過ぎ、少しずつプロ野球界に新たな歴史を刻んできた英雄軍団。キウムヒーローズと新たな名前を与えられた2019年、初の韓国シリーズ優勝へ向けて更なる飛躍を遂げていくかもしれない。

 

(文責:ふるりん