DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2018年シーズン回顧 第3回 ハンファイーグルス

11年ぶりのポストシーズン進出

2018年シーズン成績

レギュラーシーズン:77勝67敗(勝率.535)3位

ポストシーズン:準プレーオフ(対ネクセン)1勝3敗 敗退

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本拠地ハンファ生命イーグルスパークの内野1塁応援席

 

1.失われた10年から脱出へ

 2006年に韓国シリーズに出場したものの(サムソンに敗れ準優勝)、2008年にレギュラーシーズン5位(当時は8球団制)でポストシーズン進出を逃してから2017年までの10年間、ハンファイーグルスポストシーズンに進出できず、「秋の野球」とは無縁であり続けた。これはLGツインスの2003年から2012年までに並ぶプロ野球ワーストタイ記録である。プロ野球史上屈指の暗黒時代を過ごしたハンファは、当然そこから脱するための努力を惜しまなかったがなかなか実を結ばなかった。

 2009年、最下位に転落してキム・インシク監督が辞任し、2010年からハン・デファ監督が就任するも2年連続最下位だった。2011年こそ同率6位で最下位から脱出したが、2012年はまたもや最下位だった。プロ野球が9球団制に拡大した2013年、1997年までにヘテタイガーズ(キアの前身)で9度の韓国シリーズ優勝を達成したキム・ウンニョン監督を新球団NCダイノスなどの後塵を拝しプロ野球史上初の9位(最下位)に終わり、さらには2014年は3年連続最下位と、FA(フリーエージェント)となったチョン・グヌ、イ・ヨンギュの韓国代表クラスの選手2名を獲得したとはいえ、70歳を超え現場を8年間離れていた名将では現代のプロ野球にはついていけなくなっていた。

 そしてプロ野球が現在の10球団制となった2015年からは同じく70歳を超えたキム・ソングン監督が就任し、SKワイバーンスを3度の韓国シリーズ優勝(2007・2008・2010年)に導いた手腕が発揮されることを期待した。2015年は新球団KTの実力不足もあって最下位からはようやく脱出し、2009年以降では最高の6位だった。勢いに乗りFAとなった選手たちを補強し続けたが、2016年は7位に終わり、2017年はキム・ソングン監督がフロントとの対立でシーズン途中で辞任し、8位と順位はさらに下がりポストシーズン進出はならなかった。長いトンネルはまだ終わりが見えず、ファンなら誰もが待ち焦がれ我を忘れて熱狂する「秋の野球」は遠い夢のかなたにあるかと思われた。

 ここでハンファは路線を変更した。2018年から指揮を執るハン・ヨンドク監督は就任時に52歳で、2012年8月から一時期ハンファの監督代行だったことはあるものの、一軍の正式な監督は初めてであったが、現役時代にハンファの主力投手だった。またかつて主砲として活躍したチャン・ジョンフン、現役通算210勝(プロ野球史上最多)の主力投手だったソン・ジヌと、2名ともハンファの永久欠番となっている有力なOBをコーチとして呼び戻した。他チームで実績のある指導者を呼び過去の手腕に期待するのではなく、ハンファイーグルスとしての原点へと戻り1999年以来の韓国シリーズ優勝を目指すことにしたのだ。

 2018年シーズン開幕を前に外国人選手以外に大きな補強はなかったが、5月になって調子を上げ上位争いを続けた。トゥサンが首位を独走する中、SKやLGなどとの2位争いを続け勝率5割台後半を維持した。新外国人選手3名のうちホイングが打撃だけでなく外野の守備でも勝利に貢献し、左腕サンプソンも先発として活躍し勝ち星を積み重ねた。打線は他チームと比べて強力とは言えずベテランが多かったが、経験豊富なイ・ヨンギュが1番打者としてチャンスを演出し、ホイングや同じくベテランの左の大砲イ・ソンヨルなどの中軸が返し、先発陣は層が薄かったが豊富な中継ぎと抑えのチョン・ウラムなどの質の高いリリーフ陣で逃げ切る勝ちパターンが確立された。

 レギュラーシーズン半ばを過ぎた6月30日には53勝26敗の勝率6割で首位トゥサンとは4.5ゲーム差の2位と、チームは絶頂にあった。観客動員も好調で、本拠地・大田(テジョン)のハンファ生命イーグルスパークでは10年ぶりの上位争いで大勢のファンたちが熱狂が続き、8回裏の名物応援「チェ!ガン!ハン!ファ!」の絶叫も高らかに鳴り響いた。しかし7月に調子が落ち下旬にはSKに抜かれて3位に後退し、独走態勢を築いた首位トゥサンとの差は大きく開いた。

 勝率は5割半ばへと下がり、9月6日には一時SKを抜いて2位に浮上したものの1日で3位に後退した。その後も勝率が下がり、8月以降に好調で4位に浮上したネクセンが背後に迫ってきたが、5位以下が勝率5割未満だったこともあり9月下旬には2007年以来11年ぶりのポストシーズン進出が確定した。混戦の2位争いの中、10月13日のレギュラーシーズン最終戦となったNC戦で勝利し、3位が確定しポストシーズンは準プレーオフからの出場となった。

 レギュラーシーズン後半は調子が下がっていた中、11年ぶりのポストシーズンはチームの経験不足が不安視され、それが的中してしまった。10月19日からの準プレーオフではネクセンと対戦し、本拠地・大田での第1戦は先発ヘイルが好投するも攻守にミスが目立ち2-3と1点差で敗れた。第2戦は継投が機能せず5-7と本拠地で連敗スタートと苦しい展開となった。場所を敵地・高尺に移した第3戦は9回表にベテランのキム・テギュンのタイムリーで1点を勝ち越し、抑えのチョン・ウラムが反撃を断って4-3で勝利し望みをつないだ。だが第4戦、先発を19歳の高卒新人左腕パク・チュホンに頼らざるを得ない苦しい状況となり、4回裏に逆転を許すとそのまま2-5で敗れ、ファンたちが長年待ち焦がれていた「秋の野球」はここで終わりを告げた。

 最後の準プレーオフは苦い結果に終わったが、2018年シーズンのハンファイーグルスの戦いは、それまでの「失われた10年」を少し取り戻したかのように感じられた。

 

2.チーム分析

 2018年シーズンのハンファの強みはリリーフ陣であった。

 チーム防御率は4.95でリーグ2位だが、リリーフの防御率は4.29で1位だった。最多セーブ(35)の個人タイトルを受賞した抑えのチョン・ウラムだけでなく、右の中継ぎ3名、チーム最多登板(69試合)のパク・サンウォン、FAで移籍した2015年以降不振が続いたが復活し68試合に登板したソン・ウンボム、63試合に登板したイ・テヤンがいずれも防御率2点台で非常に安定していた。ほかにも右のアン・ヨンミョン(8勝)とソ・ギュン、左のキム・ボムスも50試合以上に登板し、層が薄かった先発陣を補った。

 先発陣の防御率は5.46のリーグ5位と心もとなかった。規定投球回数(144)に達したのは外国人左腕サンプソンのみで、チーム最多の13勝をあげ、最多奪三振(195)の個人タイトルを受賞した。だが100回以上投げたのがキム・ジェヨン、7月までに3勝しかあげられず退団となった外国人左腕ウィーラーのみで、韓国人の先発投手の育成が急務となっていた。ウィーラーの代役の外国人投手ヘイルも3勝にとどまった。23歳の右腕キム・ミヌが20試合に先発し5勝と可能性を感じさせた。

 チームの総得点(729)はリーグ9位と攻撃力は弱かった。チーム打率.275はリーグ8位、チーム本塁打数151はリーグ7位とやや寂しい数字が並ぶ。打線の軸となったのは韓国1年目のホイングで、30本塁打・110打点(チーム最多)・23盗塁の成績で走攻守そろった優良外国人選手だった。また34歳のベテラン左打者イ・ソンヨルがチーム最多にして自身最多の34本塁打・102打点を記録し、ホイングとともに中軸を打った。

 そのほかにはソン・グァンミン、チョン・グヌ、キム・テギュンなどの30代のベテラン内野手たちも安定した成績を残したが、24歳のショートのレギュラーだったハ・ジュソクが自身最多の141試合に出場し更なる成長を見せた。また若手で特筆すべきは2000年生まれの18歳の高卒新人チョン・ウヌォン内野手が98試合に出場し4本塁打を記録、準プレーオフにも出場するなど高い素質を感じさせた。

 打撃力が低い代わりにリーグ1位の118盗塁を記録した走力で補ったが、その中心は33歳にしてチーム最多盗塁(30)を記録したイ・ヨンギュで、2017年の不振から完全に立ち直った。

 昨今のプロ野球は打高投低で攻撃力ばかりが目立つが、ハンファは野球の基本である投手力を重視し、少ない得点を合理的な継投で守りきり、11年ぶりのポストシーズン進出という成果を出すことができた。

 

 3.2019年シーズンに向けて

 オフシーズンにFAとなったソン・グァンミン、イ・ヨンギュ、チェ・ジンヘンの野手たちとは再契約したが、2014年から2015年にかけてFAで移籍し複数年契約を結んでいたペ・ヨンス、クォン・ヒョク、シム・スチャン(8月に自由契約)の35歳以上の投手たちとは契約せず、ペ・ヨンスとクォン・ヒョクはトゥサン、シム・スチャンはLGへとそれぞれ移籍した。

 外国人選手はホイングのみ再契約し、チーム最多勝(13勝)もレギュラーシーズン後半は不調だったサンプソン、そしてヘイルとは再契約しなかった。その代わりに新外国人選手としてオーストラリア代表経験のあるワーウィック・サーポルド、チャド・ベルと2名の左腕投手と契約した。

 2019年シーズン、ハン・ヨンドク監督にとっては2年目のシーズンとなる。2018年は30代のベテラン勢を中心に起用し結果を出したが、2年連続で成功するとは限らず先を考えると若手や20代の選手たちを中心としたチームに転換したいところだ。勝負の年にするか育成の年にするかの判断は難しいだろうが、10年の低迷から希望を見出したファンたちは、1999年以来2度目となる韓国シリーズ優勝をこれまで以上に待ち焦がれていることであろう。

 

(文責:ふるりん