DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2018年シーズン回顧 第2回 トゥサンベアース

最強軍団の予想外の結末

2018年シーズン成績

レギュラーシーズン:93勝51敗(勝率.646)1位

ポストシーズン韓国シリーズ(対SK)2勝4敗 準優勝

 

1.レギュラーシーズンは独走優勝、しかし…

 

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2018年、レギュラーシーズンでは圧倒的な強さで優勝し、2年ぶりの韓国シリーズ優勝は間違いないと思われていた…

  キム・テヒョン監督が就任した2015年にレギュラーシーズン3位からポストシーズンを勝ち上がって韓国シリーズで優勝し、2016年はレギュラーシーズン・韓国シリーズともに優勝し連覇を達成、2017年も韓国シリーズ準優勝と黄金時代を築いていたトゥサンベアース。2018年も優勝候補とされ、その期待にたがわぬ期待をレギュラーシーズンでは見せ付けた。

 3月24日の開幕戦から大きく調子を落とすことなく、4月以降安定して勝率6割以上を維持し、一時SKと同率首位に並ばれることもあったが独走態勢を築いた。6月22日、レギュラーシーズン144試合の折り返しとなった72試合目での成績は48勝24敗(勝率.667)で2位ハンファとは6.5ゲーム差をつけていた。

 首位独走の立役者は打者だと4番キム・ジェファンと正捕手ヤン・ウィジ、投手だと外国人選手のリンドブロムだった。特に2015年から2017年までロッテで活躍したが、再契約の交渉が決裂したため2018年はトゥサンと契約したリンドブロムの移籍は大きく、2017年まで先発として7年間活躍していた外国人選手ニッパートの穴を埋めた。もう一人の外国人選手フランコフも、7月4日のロッテ戦まで開幕13連勝と勝ち星を積み重ねた。課題だった抑えもハム・トクチュが定着した。

 投打ともに選手層が厚く大きな死角が見当たらない中、唯一の弱点は外国人打者が活躍しないことだった。シーズン当初に契約したパラデス(元千葉ロッテ)は1本塁打・4打点のみの成績で6月1日にウェーバー公示され、代役となったバンスライクも同様の成績で9月20日ウェーバー公示された。それでもトゥサンの独走態勢にまったく陰りはなく、9月25日、本拠地・蚕室野球場でのネクセン戦で勝利し、2年ぶりのレギュラーシーズン優勝、4年連続の韓国シリーズ出場を決めた。

 10月14日のレギュラーシーズン最終戦のロッテ戦で勝利し、2016年に並ぶシーズン93勝のプロ野球タイ記録に並んだ。2位SKとは14.5ゲーム差と圧倒的な内容で、2年ぶりの韓国シリーズ優勝を疑う声はほとんど聞かれなかった。

 レギュラーシーズン93勝のうち61勝はポストシーズンに進出できなかった6位以下のチームから記録したもので、下位5チーム相手の勝率は.788と驚異的だった。中でも同じ蚕室野球場を本拠地とする8位LGとの対戦成績は15勝1敗と、独走態勢の維持に大きな影響を与えた。対照的にトゥサン以外のポストシーズンへ進出した2位SK、3位ハンファ、4位ネクセン、5位キアとの対戦成績はそれぞれ8勝8敗、4チーム合計では32勝32敗の五分だったという点に一抹の不安が残った。

 韓国シリーズまでは3週間程度日程が空いたため、トゥサンは実践感覚のため日本で練習試合を実施した。これはレギュラーシーズンで余裕を持って優勝し、韓国シリーズではNC相手に4戦全勝で優勝した2016年でも同じ調整方法だった。ところが、練習試合で中継ぎの柱だったキム・ガンニュルが負傷し韓国シリーズに出場できなくなったあたりから暗雲が垂れこめ出した。

 11月4日からの韓国シリーズは、2008年、2009年と過去2度の対戦でどちらも敗れているSKだったが、ネクセンとのプレーオフで第5戦、しかも延長戦までもつれ込み中1日で韓国シリーズに出場したため、コンディションの面でトゥサンが圧倒的に有利かと思われた。しかし蚕室での第1戦、トゥサンの先発リンドブロムから1回表に本塁打で機先を制されると、6回裏にチェ・ジュファンのタイムリーで逆転するも7回表にリンドブロムが逆転を許すなど、キム・ガンニュルの不在を感じさせ3-7で敗れた。

 第2戦はチェ・ジュファンの本塁打、先発フランコフの好投で7-3と勝利し体勢を立て直したかに思われたが、この試合で3安打を記録した4番打者キム・ジェファンが第3戦を前にして練習中の故障で欠場となった。舞台を敵地・仁川に移した第3戦は先発イ・ヨンチャンが先制点を許し、キム・ジェファン不在の打線はつながらず2-7で敗れてしまった。第4戦は雨で1日順延となり、先発リンドブロムが1点を先制されるも追加点を与えず、8回表、9月に軍から除隊され復帰した2015年韓国シリーズMVPと大舞台に強いチョン・スビンの本塁打で逆転し、2-1で勝利し対戦成績を2勝2敗に戻した。しかし第5戦、チョン・ジンホの本塁打で1点を先制するも追加点が奪えず、先発フランコフが7回裏に逆転を許し1-4で敗れてしまうと、もう後がなくなってしまった。明らかにキム・ジェファンの不在は大きかった。

 そして蚕室に戻った第6戦は、先発イ・ヨンチャンが1回表に1点を先制されると2回表には2番手イ・ヨンハを登板させ、4回表に2点を追加されるなど苦しい展開となった。だが6回裏にチェ・ジュファンとヤン・ウィジのタイムリーで3-3の同点に追いつき、8回裏にヤン・ウィジの犠牲フライで4-3と逆転した。しかし8回表までにパク・チグク、ハム・トクチュの信頼できるリリーフを登板させてしまったため、9回表にリンドブロムを登板させることになった。そしてこれは裏目に出て、2アウトからチェ・ジョンに同点本塁打を許し、試合は延長戦に入った。12回まで両チーム無得点の緊迫した展開だったが、13回表にレギュラーシーズン終盤の不調で韓国シリーズでは登板の機会がなかったユ・ヒィグァンを登板させたところ、ハン・ドンミンに勝ち越し本塁打を許し、このまま敗れてしまい2年ぶりの韓国シリーズ優勝もならなかった。

 韓国シリーズではキム・ガンニュル、キム・ジェファンといった投打の主力を欠いたことでチームのバランスが崩れてしまい、普段とは異なる役割を求められた選手たちが力を発揮できず、トゥサンはレギュラーシーズン中の圧倒的な強さを失ってしまった。改めて不測の事態にも備えなければならない長期のリーグ戦とはまるで異なる短期決戦の難しさを感じさせられた。

 

2.チーム分析

 韓国シリーズ優勝を逃したトゥサンだが、レギュラーシーズンでは圧倒的な攻撃力で2位SKに14.5ゲーム差をつけ独走態勢で優勝した。

 チーム打率(.309)はリーグ1位、本塁打数(191)は4位だったが得点(944)は1位だった。中軸となったのは4番打者キム・ジェファンで、本塁打(44本)・打点(133)のリーグ二冠を達成し、その不在はあまりにも韓国シリーズでは痛かったことがわかる。代わりに韓国シリーズではチェ・ジュファン(26本塁打・108打点)の活躍が目立ったが、オ・ジェイル(27本塁打・80打点)、パク・コヌ(12本塁打・84打点)の不調が響いた。

 正捕手ヤン・ウィジは打率.358とリーグ2位(規定打席到達者)で、23本塁打・77打点と攻撃でも中核のひとりとなっていた。ほかにも三塁のレギュラーだったホ・ギョンミン(10本塁打・80打点)が1番打者として活躍し、下位打線ではキム・ジェホ(16本塁打・75打点)がアクセントとなっていた。控えの選手たちも一定の成績を残したが、やはりレギュラーとの実力差は少なからずあり、韓国シリーズでは大舞台での経験不足もあり力を発揮できなかった。また、パラデスとバンスライクの外国人選手2名が合計で2本塁打・8打点とまったく戦力にならず、韓国シリーズでのキム・ジェファンの離脱の穴をさらに広げてしまった。

 投手陣について、チーム防御率(5.00)はリーグ3位だったため、上述した打線の攻撃力に支えられていた。韓国1年目の外国人選手フランコフは打線の援護もありリーグ最多の18勝を記録したが、防御率は3.74で28試合に先発し7回以上を投げたのが2試合のみ、8回以上はなしと長いイニングを任せられなかった。実質的な先発投手陣の軸だったのは最優秀防御率(2.88)の個人タイトルを受賞したもう1人の外国人投手リンドブロムで、韓国では自身最多の15勝を記録、先発として26試合に登板した中で8回以上を投げたのは4試合もあった。

 韓国人選手では先発に再転向したイ・ヨンチャンが15勝と結果を残した。また21歳の若手右腕イ・ヨンハが自身初の10勝を記録するなど次代のエース候補に名乗りをあげた。その一方で32歳のベテラン左腕ユ・ヒィグァンが10勝したものの防御率は6.70と内容が悪く、個人通算129勝(2018年シーズン終了時)を記録した33歳のベテラン左腕チャン・ウォンジュンが3勝どまりと、経験豊富なベテランたちがレギュラーシーズン同様に韓国シリーズでは機能しなかったのも響いた。

 リリーフのチーム防御率(5.13)はリーグ6位とあまり質は高くなかった。23歳の左腕ハム・トクチュが抑えとしてチーム最多の27セーブを記録したが、信頼できる中継ぎがキム・ガンニュル、20歳のパク・チグク、37歳のベテランのキム・スンフェくらいと層が薄く、特に左腕は35歳のベテランのイ・ヒョンスン以外は手薄だった。そのためレギュラーシーズンよりも慎重な継投が求められた韓国シリーズでは、キム・ガンニュルの不在が大きく響き後手を踏むことになった。

 またトゥサンのチーム成績で特筆すべき点はリーグ最小の失策数(77)である。オ・ジェウォン、キム・ジェホ、ホ・ギョンミンといった2014年から2017年までの野球韓国代表に召集されてきた内野陣は安定した守備を見せた。

 

3.2019年シーズンに向けて

 まさかの韓国シリーズ敗退から1ヶ月もたたない2018年12月11日、FA(フリーエージェント)となっていた正捕手ヤン・ウィジがNCと4年契約を結び移籍した。トゥサンは2015年以降にキム・ヒョンス、ミン・ビョンホンなどFAとなった主力選手を引き止めなかった過去があるが、チームの要である捕手を失った衝撃はその比ではない。ヤン・ウィジの補償選手としては、NCで伸び悩んでいる24歳の右腕イ・ヒョンボム投手が指名された。そのほかの戦力補強としては、ハンファを自由契約となった37歳のベテラン右腕で個人通算137勝(2018年シーズン終了時)を記録したペ・ヨンス投手と、新外国人選手ホセ・フェルナンデス内野手くらいである。またリンドブロム、フランコフの両外国人投手とは再契約した。

 2015年以降は最強軍団というイメージをもたれてきたトゥサンであるが、2019年からは主力選手の多くが30代となり世代交代も必要となってくる。10年以上前から自前で若手を育てて主力として活躍させることに長けている球団であるため、6度目の韓国シリーズ優勝に向けこれからはチームの地力がさらに試されていくことであろう。

 

(文責:ふるりん