DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2018年シーズン回顧 第1回 SKワイバーンス

外国人指揮官のもとで4度目の頂点に

2018年シーズン成績 

レギュラーシーズン:78勝65敗1分(勝率.545)2位

ポストシーズンプレーオフ(対ネクセン)3勝2敗→韓国シリーズ(対トゥサン)4勝2敗 優勝

 

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本拠地・仁川SK幸福ドリーム球場の巨大なスコアボード

1.8年ぶり4度目の韓国シリーズ優勝へ

 2017年より指揮を執っていたSK初の外国人監督トレイ・ヒルマン(元北海道日本ハム)は、韓国の野球に慣れチームを把握した2018年を勝負の年として位置づけていただろう。前年は故障で1試合も登板できなかった先発の柱キム・グァンヒョンが復活したからである。狭い本拠地・仁川(インチョン)SK幸福ドリーム球場の特性を生かした本塁打攻勢と、かつてMLB(メジャーリーグベースボール)での監督、コーチとしての経験を生かした大胆な守備シフト、ここぞの場面でのセーフティースクイズなど、独自の作戦を生かした野球は注目を集めた。

 3月24日に開幕したレギュラーシーズンでは5月中にトゥサンの独走態勢を許したこともあり、ポストシーズンで有利に戦うための2位確保へと目標を切り替えていったと思われる。9月以降の終盤戦ではハンファとの熾烈な2位争いが続き、これを何とか制してポストシーズンプレーオフからの出場となった。

 レギュラーシーズン最終戦の10月13日のLG戦を前にして、トレイ・ヒルマン監督が家庭の事情により2018年で切れるSKとの契約を延長せず、母国のアメリカ合衆国へ戻るという衝撃の報道がなされた。しかし、SKの選手たちはこれで動揺することなく韓国シリーズ優勝を目標に一丸となったようである。ハンファとの準プレーオフを勝ち上がったネクセン(2019年よりキウム)とのプレーオフ(10月27日-11月2日)は、本拠地・仁川での第1・2戦と連勝したものの、敵地・高尺での第3・4戦と連敗し、決着は仁川での第5戦へと持ち越された。

  運命の第5戦、SKは8回裏まで9-4と5点差をつけていたが、リリーフで投入した外国人投手ケリーが2点を失い、代わったシン・ジェウンはネクセンの4番パク・ピョンホに同点3ランを打たれた。試合は延長に突入し、ネクセンは10回表に1点を勝ち越すも、SKは10回裏にベテランのキム・ガンミンが同点本塁打を放つと、ハン・ドンミンの本塁打で11-10とサヨナラ勝ちし、6年ぶりの韓国シリーズ進出を決めた。

 11月4日からのトゥサンとの韓国シリーズは、過去2度の対戦(2008年・2009年)はともにSKが優勝しているものの、このときと違ってトゥサンがレギュラーシーズン優勝で韓国シリーズ直行と有利な立場にあった。しかし、トゥサンは中継ぎの柱だったキム・ガンニュルを故障で欠いていた。SKは第1戦の1回表、プレーオフ第5戦でサヨナラ本塁打を打ったハン・ドンミンの本塁打で2点を先制し、一時逆転されたが6回表にレギュラーシーズンではほとんど出番がなかったベテランのパク・チョングォンの本塁打で逆転すると、7-3で勝利した。トゥサンは4番打者キム・ジェファンも故障で欠場するなど劣勢を強いられるようになった。

 韓国シリーズで第5戦まで3勝2敗と優位に進め、優勝まであと1勝とした敵地・蚕室での11月12日の第6戦は冬を感じさせる夜の大熱戦となった。SKは4回表までに3点を奪うが、プレーオフに続いてリリーフで登板したケリーが6回裏に同点に追いつかれ、8回裏には1点を勝ち越された。このまま決着は第7戦にもつれ込むかと思われた9回表2死走者なしからチェ・ジョンの本塁打で4-4の同点に追いつき、試合は延長戦に突入した。その後12回まで互いに無得点と緊迫した展開が続いたが、13回表にハン・ドンミンの本塁打で1点を勝ち越した。そして8年前の2010年韓国シリーズ第4戦9回裏と同じように、エースのキム・グァンヒョンが圧倒的な球威で三者凡退に抑え、SKは4回目の韓国シリーズ優勝を成し遂げた。

 レギュラーシーズンでは優勝したトゥサンと2位SKは14.5ゲーム差と大差をつけられたが、キム・ガンニュルと第3戦以降故障で出場できなくなった4番打者キム・ジェファン不在というトゥサンの隙を突き、先発要員のケリー、レギュラーシーズンの終盤で調子を落としていたサンチェスの外国人投手2名をリリーフで起用するなど、柔軟な采配でトレイ・ヒルマン監督は韓国での最後の大舞台で最高の結果を残した。また、過去3度の韓国シリーズ優勝を知るキム・グァンヒョン、キム・ガンミン、ナ・ジュファン、パク・チョングォンたちも大舞台で力を発揮した。

 

2.チーム分析

 2018年のSKワイバーンスは前年同様、リーグ1位の本塁打数(233)が際立っていた。チーム最多本塁打の外国人打者ロマック(43本・107打点)、ハン・ドンミン(41本・115打点)、チェ・ジョン(35本・74打点)、キム・ドンヨプ(27本・76打点)などが並ぶ打線は迫力満点だったが、攻撃につながりを欠いたかチーム得点(829)は3位にとどまった。そういった中で韓国シリーズを欠場したが、25盗塁を記録した外野手ノ・スグァンの存在は貴重だった。

 またキム・ドンヨプは11盗塁、ロマックは10盗塁と、一発のある打者たちも走塁への意識が高かったのが意外である。ともあれ、プレーオフ、韓国シリーズともにハン・ドンミンの本塁打で決着がついたこともあり、SKといえば本塁打軍団というイメージは根強い。

 韓国シリーズ優勝は、リーグ1位のチーム防御率(4.69)を記録した投手陣によるところも大きい。特に先発陣はチーム最多勝(14勝)を記録した右のアンダースロー、パク・チョンフンの成長が大きかった。前年の故障から復活したキム・グァンヒョンは11勝、安定した投球を続けた外国人投手ケリーは12勝、2年連続で先発として起用されたムン・スンウォンは8勝と先発投手陣は頭数がそろい、リーグ1位の防御率(4.17)だった。

 反面、リリーフの防御率(5.49)はリーグ7位と質が高いとはいえなかった。レギュラーシーズンを通して抑えを固定できず、36歳のベテラン左腕シン・ジェウンがチーム最多の16セーブ、同じく36歳の右腕パク・チョンベが9セーブ、中継ぎでは右腕チョン・ヨンイルがチーム最多ホールド(13)を記録したが、いずれも安定感を欠いた。そのため韓国シリーズでは外国人投手のサンチェス、レギュラーシーズンでチーム最多登板(61試合)のキム・テフンなどに試合展開に応じて肝心な場面でのリリーフを任せるなど、トレイ・ヒルマン監督の柔軟な采配で乗り切った。

 

3.2019年シーズンに向けて

 韓国シリーズ終了後、トレイ・ヒルマン監督は2年契約を終えて退任し、後任には2016年までネクセンの監督だったヨム・ギョンヨプ新監督が就任した。2017年以降はSKの団長としてチームを掌握しており、2年ぶりの現場復帰となった。

 FA(フリーエージェント)となった生え抜きの主力内野手チェ・ジョン、正捕手イ・ジェウォンには大型契約を提示して再契約に成功した。また長打力のある選手が余剰気味だったこともあり、キム・ドンヨプを稀に見る三角トレードでサムソンへ移籍させ、ネクセンから手薄な左の外野手コ・ジョンウクを獲得した。

 外国人選手であるが、2015年から先発として活躍してきたケリーが故郷のMLB・アリゾナダイヤモンドバックスへと移籍したため、代役の新外国人選手としてまだ24歳の若き右腕ブロック・ダイクソーンと契約した。またサンチェス、ロマックの2名とは再契約した。

 トレイ・ヒルマン監督によってもたらされた4度目の韓国シリーズ優勝により、SKには2007年から2010年までの4年間に3度韓国シリーズで優勝した黄金時代の再来を待ち望む声も高まっている。既存の戦力を生かしつつ次代を担う選手たちを育てて勝つという難題に、ヨム・ギョンヨプ監督がどのように立ち向かっていくのか注目したい。

 

(文責:ふるりん