DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  チェ・ヨンピル 43歳で現役引退へ

 
 
 2017年も残り少なくなりました。


 今回は特別企画ということで、2017年限りでプロ野球での現役生活を終えたチェ・ヨンピル投手について記そうと思います。


 右腕チェ・ヨンピル投手は1974年5月13日生まれ、1997年に慶煕大を卒業し、1次指名で現代ユニコーンズ(2007年限りで解散)へ入団しました。
 184cmの長身からの威力あるボールで即戦力として期待され、新人だった1997年には34試合に登板し4勝を記録しました。しかしその後1998年、2000年と韓国シリーズで優勝した現代では存在感を発揮できず、2001年6月にハンファへトレードで移籍しました。しかしハンファでも思うようには活躍できませんでした。
 2005年、ようやく自己最多の112回に登板し8勝と30歳を過ぎて実力を発揮し始めました。その後2008年にも主にリリーフで7勝と活躍しましたが、2009年以降登板機会が減りました。2010年シーズンオフ、36歳にして初めて得たFA(フリーエージェント)の権利を申請したものの、30代後半で明らかに下り坂の選手を高額の金銭や選手などの補償を出してまで契約しようとするチームはなく、9年ほど所属したハンファも引き留めることはしなかったため、FA承認選手の契約期限だった2011年1月15日を過ぎても韓国プロ野球のどのチームとも契約できず、同年は韓国でプレーできないことになってしまいました。

 
 37歳を過ぎた2011年6月、チェ・ヨンピルは日本の関西独立リーグ(2013年限りで活動停止)に属するソウルヘチに入団しました。このチームは在日韓国人や韓国出身者でのみ構成されていました。ソウルヘチは2012年から活動休止となりましたが、幸い前所属先のハンファがチェ・ヨンピルを自由契約選手としたため、韓国プロ野球のどのチームとも金銭や選手の補償なしに契約できることとなり、SKと契約しました。そしてこの年リリーフとして46試合に登板し、38歳にして復活を遂げました。
 翌2013年限りでSKを退団しましたが、2014年はキアと契約し40歳を過ぎても40試合に登板、4勝14ホールドと中継ぎとしては立派な成績を残しました。2015年には59試合に登板、5勝10ホールドを記録と、40代になり円熟味を増した投球を見せることができ、まさに若手のお手本というベテランに求められる役割を誰よりも果たしました。42歳を手前にした2016年4月には、プロ野球史上最年長でのセーブを記録し、この年も54試合に登板、4勝2セーブ10ホールドの成績で衰えを知らないかのように見えました。
 しかし2017年はレギュラーシーズン開幕時の3月末に一軍登録されず、二軍選手が主に出場するフューチャースリーグで6試合登板しました。2か月ほどたった5月30日が一軍初登板を果たしたものの、1アウトしかとれず1失点、翌5月31日にはチームが10点差で勝っていた9回裏に登板しましたが2点を失うなど、さすがに43歳という年齢のせいか前年までの面影が感じられませんでした。限界を感じたのか結局6月以降は試合に登板することはなく、フューチャースリーグの戦力分析など裏方の業務を続け、2018年のキアの新人ドラフト指名に向けての資料を作成したそうです。キアは10月30日、8年ぶりの韓国シリーズ優勝を果たしましたが、チェ・ヨンピルがグラウンドでその喜びを分かち合うことはできませんでした。
 1997年からの20年余りのプロ野球選手生活でチェ・ヨンピルは現代で2回、キアで1回と合計3回の韓国シリーズ優勝を経験しています。プロ野球人生としては運がいいほうであると思いますが、その優勝のいずれにもあまり貢献できなかったのもこの選手らしいな、と思います。韓国シリーズの華やかな舞台の裏で、チェ・ヨンピルはキアの二軍の若手選手たちの指導を続けていたそうです。
 
 
 キアとしてはこのような野球への衰えぬ情熱や堅実な姿勢を持ち続けたチェ・ヨンピルに指導者として残ってほしかったでしょうが、12月27日、出身地の水原市を本拠地とするKTウィズのコーチ就任が発表されました。KTは2015年の一軍参入後3年連続最下位と歴史の浅さゆえの選手層の薄さで他球団との戦力差が依然として大きく、若手にとって一軍でも他球団よりチャンスが多いであろうKTではチェ・ヨンピルの指導力が発揮されるのではないかと思います。なお、長男は父親の母校でもある慶煕大野球部の選手(投手)で、夢として常々語っていたように、親子ともにプロ野球選手として試合に出場することはできませんでした。しかし、長男には2019年の大学卒業後にプロ野球選手になる可能性があります。KTで父親の指導の下、活躍できれは野球人生の冥利に尽きるでしょう。


 チェ・ヨンピルのプロ20年間の通算成績は549試合に登板、50勝63敗16セーブ58ホールド、防御率4.73でした。もし2018年シーズンも現役を続け、誕生日である5月3日以降に登板していたら、プロ野球史上初めて満44歳で試合に出場した選手となるところでした。引退は非常に惜しまれる選手ですが、プロ野球選手としての晩年を迎える年で厳しい環境におかれても情熱を燃やし続け、40歳を過ぎても一軍で活躍することができたチェ・ヨンピルには最大限の賛辞を送りたいと思います。


 もし今後も時間と機会があれば、国際舞台で活躍するような図抜けた才能と実績はないものの、このように野球への情熱にあふれた選手、ないし指導者を紹介したいと思います。 

(文責:ふるりん