DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第2回 トゥサンベアーズ

2007年成績 : 70勝54敗2分 公式戦2位 韓国シリーズ準優勝
 今季のトゥサンは、2006年5位と不本意な成績に終わっただけでなく、エースとして活躍してきたパク・ミョンファンのLGへのFA移籍、ショートのレギュラーだったソン・シホンの軍への入隊など、マイナスの要素が目立ち不安は大きかった。だが、北京五輪予選韓国代表監督にも選ばれたキム・ギョンムン監督は、以前にも増して若手を積極的に起用し、公式戦2位という好成績を残した。

 開幕直後は投打がかみ合わず苦しみ、4月8日のサムソン戦から6連敗するなど、4月は8勝12敗と最下位に終わってしまった。5月になるとチームの調子が上がり、3日から引き分け1つをはさみ6連勝で最下位を脱出し、26日には勝率5割に復帰し順位も4位まで上げた。さらに5月29日から31日の首位SK3連戦で3連勝するなど5連勝で5月を終え、15勝8敗と大きく勝ち越し3位にまで浮上した。
 6月になるとハンファ、SKとの3つ巴の首位争いに加わるようになり、外国人エースのリオスも6月1日のLG戦で完封勝利し最多勝争いトップの8勝目をあげると、順調に勝ち星を積み重ねていった。高卒新人ながら春季キャンプから評価の高かった右腕イム・テフンは、中継ぎとして毎試合連投を重ねチームの勝利に貢献し続けた。2006年はWBC(ワールドベースボールクラシック)の負傷でシーズンの3分の2を棒に振った主砲キム・ドンジュも完全復活し、軸がしっかりした打線は去年の貧打が嘘のように得点力がアップした。そして10日のサムソン戦に勝利し、2005年以来2年ぶりに首位に立った。だが12日SKにその座を奪い返され日替わり首位が続いたが、20日にその座をSKに譲ると、2度とその座に返り咲くことはなかった。

 6月も14勝9敗と5月についで好調を維持したが、6月下旬から11連勝したSKの勢いがそれを上回ってしまった。7月5日には3位に後退し、首位SKが独走態勢に入った12日には7ゲーム差をつけられてしまったが、13日からの直接対決で3連勝し2位に浮上、ゲーム差を4に縮めオールスター戦前の前半戦を終えた。エースのリオスは11連勝で最多勝争い独走の13勝を記録していた。
 8月が近づいてもSKとの差を詰めることはできず、26日には再び3位に後退し、開幕直後から上位に残っているハンファ、出遅れていたが徐々に地力を発揮してきた前年の王者サムソン、同じ蚕室を本拠地とするライバルLGとの2位争いが激化してきた。7月は9勝10敗と負け越してしまったが、31日にハンファとの直接対決に勝ち2位で終えることができた。
 8月になっても首位SKを捉えられず一進一退の状況が続いたが、エースのリオスが要所で勝ち大きく連敗をすることなく、ハンファ、サムソンの追い上げを耐え抜き13勝8敗と勝ち越し2位の座を死守した。9月以降は比較的試合間隔が空いた日程が組まれたため、他チームよりも余裕を持って戦うことができ、絶好調リオスの投げる試合が多く2位争いで優位に立ち、徐々にハンファ、サムソンとのゲーム差を広げていった。リオスは20日の現代戦で、外国人投手初のシーズン20勝の大記録を達成し、8月以降は負けなしの8連勝で22勝を記録し、シーズンMVP、最優秀防御率、最優秀勝率、ゴールデングラブ賞などタイトルを総なめにした。
 10月3日の現代戦で、リオスのあわや完全試合というすばらしい投球で、トゥサンは2位を確定しプレーオフ進出を決めた。

[22勝しタイトルを総なめにしたエースのリオス。]

 公式戦での戦いを振り返ると、投手ではシーズンMVPにも輝いたリオスだけでなく、もう1人の外国人投手ランデル(元読売)も12勝し、米国マイナーリーグ出身のイ・スンハクも後半は先発に回り7勝と、韓国1年目にしては悪くない成績だった。イム・テフンは64試合に登板し7勝をあげ、新人王にも輝いた。守護神チョン・ジェフンは25セーブをあげたが、シーズン終盤は不調に陥り抑えから外れてしまった。チーム防御率は3.44と8球団中2位だったが、首位SKと比べて先発3番手以降、中継ぎなどリリーフの層が薄かった。
 打線は8球団トップの161個のチーム盗塁数に象徴されるように、機動力が最大の武器だった。2006年盗塁王のイ・ジョンウクが47個、セカンドのコ・ヨンミンが37盗塁、外野の若手ミン・ビョンホンが30個と、30盗塁以上が3人もいた。普段走るイメージのない主砲キム・ドンジュも11個の盗塁を記録している。打率は.263とで8球団中5位と高くはないが、機動力を生かし得点効率がよかったため、チーム総得点は優勝したSKに次ぐ578だった。一発を打てる打者はあまり多くはなかったが、主砲キム・ドンジュが19本塁打、2006年ロッテから移籍し才能が開花した長距離砲チェ・ジュンソクが16本塁打を打っただけでなく、コ・ヨンミンも12本塁打を打ち守備や走塁だけでなく打撃でも存在感を示した。
 守備はセカンドのコ・ヨンミンの更なる成長、SKからシーズン途中に移籍したイ・デスがショートに定着し、内外野ともに比較的安定していた。蚕室の外野は広いため、イ・ジョンウク、ミン・ビョンホンなど快足の選手が起用され、特にミン・ビョンホンの成長が大きかった。従来の正捕手ホン・ソンフンは負傷で戦線から離脱したが、その穴を今季兵役から復帰したチェ・サンビョンが埋め、シーズン後半からは正捕手に定着した。

 ポストシーズンは10月14日からのプレーオフから出場し、サムソンとの準プレーオフを勝ち抜いたハンファと対戦した。蚕室での第1戦はリオスの最高のピッチングと、相手の先発チェ・ヨンピルの暴投などを見逃さないそつのない攻撃で8−0と快勝した。第2戦はトゥサンの先発ランデル、ハンファの先発チョン・ミンチョル(元読売)ともに調子が悪く、打撃戦となったが9−5でトゥサンが制し韓国シリーズ進出に王手をかけた。舞台を大田(テジョン)に移した第3戦は、トゥサンがハンファの先発リュ・ヒョンジンから初回に3点を奪い、先発キム・ミョンジェも好投し6−0で3連勝し、2年ぶりの韓国シリーズ進出を決めた。投手陣の好投だけでなく、プレーオフMVPを受賞したイ・ジョンウクなど快足の選手たちの積極的な走塁が目立った。

 10月22日からの韓国シリーズでは、公式戦初優勝のSKとの対戦となった。敵地文鶴(ムナク)野球場での第1戦は、先発リオスがプレーオフに続く好投を見せ4安打で完封し、打線もSKの先発レイボーン(元広島)から数少ないチャンスを生かし2−0で勝利した。第2戦は先発ランデルが2点を先制されるが、SKの先発チェ・ビョンニョンからコ・ヨンミンとチェ・サンビョンの本塁打で逆転する。その後3−3の同点に追いつかれたが、イ・デスの決勝タイムリーで6−3で逆転勝ちし、トゥサンが連勝スタートとなった。韓国シリーズで連勝スタートしたチームはこれまですべて優勝しているという縁起のいいジンクスもあったが、第2戦で乱闘騒ぎがあり、ベテランのアン・ギョンヒョンが骨折でシリーズ絶望となるなど前途に暗雲が立ち込めだしていた。
 舞台を本拠地蚕室に移した第3戦では、先発キム・ミョンジェが先制されてしまい、6回には死球からの乱闘騒ぎで試合が中断するなど、第2戦までとは雰囲気が打って変わってしまい、打線もSKの先発ロマノに抑えられ、9−1で敗れた。第4戦は必勝を期してリオスを中3日で先発させたが、第1戦ほどの球威はなく先制されると、打線も高卒新人キム・グァンヒョンにわずか1安打に抑えられ、4−0で敗れた。第5戦はランデル、レイボーンの投手戦となったが終盤に決勝点を奪われ4−0と敗れ王手をかけられた。本拠地での3試合ではわずか1得点に抑えられ、完全に流れは地力に勝るSKへとわたってしまった。
 第6戦では初回これまで打線のブレーキ役だったキム・ドンジュにタイムリーが出て1点を先制したが、プロ初先発となったイム・テフンが逆転を許し、結局5−2で敗れ第3戦以降は4連敗となってしまい、SKに韓国シリーズ初優勝を許した。トゥサンにとっては、2005年サムソン相手に韓国シリーズで開幕4連敗を喫してしまったのと同じような屈辱を味わうことになってしまった。

 今季のトゥサンは、持ち味の全員野球で大方の予想以上の好成績を残したが、2001年以来の韓国シリーズ優勝には投打ともにあとひとつ以上何か物足りない印象も残した。シーズンオフにはキム・ドンジュがFAを行使し日本進出を考えていると見られ、リオスも複数の日本の球団が本格的に獲得に乗り出し、正捕手の座を奪われたホン・ソンフンも球団にトレードを要請するなど、不安な噂が絶えず出ている。この事態をどう収拾し、来季以降も優勝争いに加われるチーム力をどう維持していくか、キム・ギョンムン監督や首脳陣の手腕が問われるであろう。
(文責:ふるりん